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【イベントレポート】『伊礼彼方の部屋 vol.16 〜佐藤隆紀×三浦宏規×伊礼彼方〜』――こう見えて僕たち同期生!どう?3期目やってみて――

執筆者の写真: 松村 蘭(らんねえ)松村 蘭(らんねえ)


2025年1月25日(土)夜、生配信トークイベント『伊礼彼方の部屋 vol.16~佐藤隆紀×三浦宏規×伊礼彼方~』 ​――こう見えて僕たち同期生!どう?3期目やってみて――が開催されました。この日のゲストは、帝国劇場で上演中のミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演している佐藤隆紀さんと三浦宏規さん。年齢もキャリアも違うけれど、実は2019年から『レ・ミゼラブル』に参加している“レミ同期”の御三方が揃いました。3期目を迎えた今、それぞれ舞台に立ちながらどんなことを感じているのでしょうか?


3期目ならではの変化


同期生3人が揃ったということで、スタジオには3期分(2019年、2021年、2024-2025年)の公演プログラムがズラリ。早速手に取り、それぞれの扮装写真をチェックし合います。初出演の2019年はカツラが間に合わず、まるでゴルゴ13になってしまったという伊礼ジャべールを見て爆笑するなど、視聴者そっちのけで盛り上がる3人。

 

すると佐藤さんが、写真を見ることができない視聴者のために「言葉で表現しよう」と提案(優しい!)。佐藤さんは三浦マリウスの扮装写真をそれぞれ「まつぼっくり(2019年)、みかん(2021年)、ステーキ(2024-2025年)」と何ともいえない絶妙なセンスで表現してくれました。お手元に該当の公演プログラムがある方は、ぜひその目でお確かめください。ちなみに、レミの扮装写真を撮り直す頻度はキャストによって違うそうです。


事前に視聴者から寄せられたたくさんの質問の中、今回特に多かったのが「3期目になって、心境や役へのアプローチに変化はありましたか?」というもの。

 

バルジャン役の佐藤さんは「所々で発声を全部変えている」と言います。これまではクラシックの発声で歌うことと芝居とのバランスで葛藤があったという佐藤さん。ところが今回、自身と同じく音大出身の新バルジャン・飯田洋輔さんが部分的にミックスボイスで芝居を成立させている姿を見て「自分の(クラシックで歌うという)プライドはいらないんじゃないか」と気付いたそう。それ以来、“どの声で歌えばお芝居が最も活きるのか”を考えるように変わったと言います。



三浦さんは今期から「疑問が増えた」&「自由になった」と自身を振り返ります。三浦さん演じるマリウスは革命と恋の狭間で悩む役どころですが、意外と歌唱シーンでは悩む描写が少ないのだとか。それ故に、歌っていない場面での芝居について演出家と何度も話し合ったそうです。また、以前は「台本の通りにやらなきゃいけない」という思い込みが強かった三浦さん。演出家に「自由にやって」と言われても、どうすればいいのかわからないという悩みがあったそう。けれど様々な経験を経た今期、台本のセリフや決まった動きに囚われず「恵みの雨」のシーンを稽古した際、自由にお芝居をすることの楽しさを実感できたと、瞳をキラキラ輝かせながら語ります。

 

1期目と2期目は、ジャべールという役に近付こうと必死だった伊礼さん。今期は役として存在しようという意識をせずに、「そのままストンと舞台上に存在することができている」と言います。ジャべールは非常に厳格なキャラクターなので、やりがいがある一方で苦しさもあったそうですが、今は演じながら「自由! 楽しい!」と感じることができているのだとか。「今期でジャべールは最後かなと思っていたけれど、もう1回やったらまた違う景色が見えるのかな」と、4回目のジャべールもちょっと考え始めている伊礼さんでした。



突如始まった三浦宏規タイム


トークが盛り上がる中、三浦さんから突然2人にお願いが。三浦さん曰く、ここまでレミ同期生として話してきたが、そもそも伊礼さんと佐藤さんは俳優として大先輩なのだからちょっと語らせてほしい、というのです。伊礼さんはこの願いを聞き入れ、急遽“三浦宏規タイム”が始まりました。



三浦さんは、まず佐藤さんがいかに一音にこだわっているのかを熱弁。バレエダンサーがタンジュの動きを何万回も練習するのと同じように、佐藤さんはひたすら一音を極め続けているのだと語ります。そんな佐藤バルジャンの発する一音は「宝なんですよ!!」と力強く断言。自称“褒められると黙っちゃう人”な佐藤さんはちょっと照れくさそうにしながら、かわいい後輩の話を聴いていました。

 

続いて、三浦さんは伊礼さんの芝居を見て「なんて型破りなんだ! なんてミュージカルに囚われていないんだ!」と感じたと言います。さらに中村勘三郎さんの「型があるから型破り。型がなければそれはただの型なし」という言葉を挙げ、「まさに伊礼さんに向けた言葉なんじゃないか」「キャリアがあっても役を模索し続ける伊礼さんだからこその魅力がある」と熱っぽく語ります。

 

そんな伊礼さんも、最初は作品の中で決められた動きをすることに抵抗があったと言います。自分の感情と違う動きをすることに葛藤しつつ、まずは作品のやり方を受け入れた伊礼さん。その姿を近くで見てきた佐藤さんは「1期目、2期目で作品の型を受け入れて、その上で型を破ったことで今の3期目の進化に繋がっているんだと思う」と伊礼ジャべールを分析。まさに三浦さんが言う型破りを体現している伊礼さんなのでした。


ここに注目! 僕だけのこだわりポイント


視聴者からの「ここに注目! 僕だけのこだわりポイントってありますか?」という質問では、三者三様の細か過ぎる芝居へのこだわりが判明しました。

 

三浦マリウスはバリケードの上で移動する際に、外にいる敵を警戒して絶対に頭がバリケードから出ないように屈んでいるそう。佐藤バルジャンは、馬車を持ち上げるシーンで必ず右手を痛める小芝居を入れることで、その直後の膝をついている芝居に動きを繋げているのだとか。伊礼ジャべールは「対決」でバルジャンに殴られたあと、暗転中でも脳震盪を起こしてよろけながら袖へ捌ける芝居を続けていると明かします。いずれも、役として舞台上で生きているからこそ生まれたこだわりですね。



トークの最後は、まだまだ続く長い公演にどう臨んでいきたいか、作品への各々の想いを語り合いました。

 

三浦さんは「3期目になってから、キャストが変わることによる面白さをより見い出せている気がする。毎回違う組み合わせを新鮮に感じながら、それぞれとの関係性を深めていきたい」と抱負を語ります。佐藤さんは、あえて少し抑えた芝居をすることで逆に声に幅が出て、芝居もブラッシュアップできることに気付いたそう。「バランスを取りながら、結果的に120%のものをお届けできるようにしたい」と目標を掲げます。伊礼さんは『レ・ミゼラブル』を「レジェンドたちがみんな通ってきて、今でも世界でトップを走る作品」とした上で「一役者として、なぜ自分がこれを表現できて、なぜ楽しめているのか、なぜ苦しんでいるのかを考えていきたい。今期のレミはそれを見つける旅だと思っている」と述べ、この日のトークを締めくくりました。

 

今回はミュージカル『レ・ミゼラブル』という超大作に挑む男たちのリアルな想いや覚悟が伝わってくる、熱い2時間となりました。公演は2025年6月16日まで続きます。それまでに再びレミのキャストで『伊礼彼方の部屋』が開催されることはあるのでしょうか? 開催されるか否かは、視聴者のみなさま次第かもしれません。



取材・文・写真:松村 蘭(らんねえ)


 

執筆者:松村 蘭(らんねえ) 演劇ライター(取材・執筆・撮影・MC) 1989年埼玉生まれ/青山学院大学国際政治経済学部卒。仕事のお供はMacBookとCanon EOS 7D。いいお芝居とおいしいビールとワインがあるところに出没します。

オフィシャルサイト:https://potofu.me/ranneechan




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