• 井上麻子 /Asako Inoue

祝再演!ダンス×朗読劇の革命的舞台「My friend Jekyll」。s**t kingzのshoji、Oguri、演出・瀬戸山美咲インタビュー



観る者を引きつける圧倒的なダンスと独創的な世界観で、ストリートダンスの新しい表現をアップデートしていくダンスパフォーマンスグループ・s**t kingz(シットキングス、通称:シッキン)。そんな“シッキン”のメンバー、shojiさんとOguriさんが役者・持田将史(もちだしょうじ)、小栗基裕(おぐりもとひろ)として挑戦する全く新しいダンス×朗読劇『My friend Jekyll』が、いよいよ2021年4月よりスタートします。上演台本・演出は瀬戸山美咲さん。2019年6月にも同じメンバーで初演され、再演を求める声が多かったこの舞台が今回はどんな仕上がりになりそうなのか。前半は瀬戸山さんも交えて、後半はshojiさんとOguriさんのインタビューでお送りします!




役割が入れ替わるWキャスト。それぞれが全く違う舞台になる気がする。


●再演が決まってどんなお気持ちですか?


shoji:初演の時の打ち上げで「絶対に再演をしましょう!」という話になっていて、会場が決まったと聞いた時は「やった!またやれる!」とうれしかったです。


Oguri:前回よりも会場が小さいので、どの席からも近い距離で、より作品にのめり込んでもらえるのかなと思います。



初演の時、shojiさんとOguriさんは言葉を発するパフォーマンスが初めて、瀬戸山さんはダンス×朗読劇という舞台を制作するのが初めてだったと思いますが、振り返ってみていかがですか?


Oguri:初演の時は稽古中からただただ緊張していました。特に朗読を上手に読むことに意識が集中しすぎていたので、今回はもっと登場人物になりきることに専念しています。声を発すること、お芝居をすることから新しい発見がいっぱいありました。たとえばシッキンのダンスなら見る側に委ねていた表現も、舞台だと曖昧に見えると指摘をいただいて、隅々まで作り込むことに取り組んだり。演出を瀬戸山さんにしていただいたのも新鮮で、それまでの自分たちには見えていなかったものに気づくことも多かったです。


shoji:当時は朗読に頭が99%くらい持っていかれていました(笑)。でも初めて声を発するパフォーマンスが瀬戸山さんの演出で本当に良かったです。基本的な動きも朗読も、自分が当時できるMAXのレベルを引き出してもらえた感覚でした。今回はダンスの部分でもより深いアプローチをして、ダンスも朗読も成長した姿をお見せしたいです。


瀬戸山:前回は朗読×ダンス×生演奏という組み合わせの正解例もなく、2人の持っているパワーもわからないなかで、未知のものをつくっているという感覚がすごくありました。朗読は半年くらい稽古をしたんですが、1人が1時間以上話すという初挑戦の2人にはいきなりハードルの高いことに挑戦してもらっていて。まずは自分の声やテンポを見つけることから始めたので、今回のほうが内容に踏み込んでやれている実感があります。また言葉ではない余白の部分で、こんなにいろんな表現ができるんだ!ということもわかったので、今回はよりダンスの持つ力を使っていきたいと考えています。



●この舞台ではOguriさんとshojiさんがそれぞれ、ダンス中心のジキル/ハイド役、朗読担当のアタスン役を日替わりで演じられます。それぞれ同じパートをやられるなかで、お互いのすごい部分などありますか?


Oguri:前回もそうだったんですが、shojiくんはなんか降りてきた瞬間の仕上がりがすごい。世界がめちゃくちゃビビットに見える瞬間がたびたびあるんですよ。「ああこの人は余計なことを考えずに、いまただ役の人物としてそこにいるんだろうな」と見ていて思う。普通に生きていても頭で考えて話すこともあれば、感情的にバーっと話しちゃうこともありますよね。そういうコントロルできない人間的な動きが出ていて、いいなって思います。僕はもっとめちゃくちゃ深くまで入らないと到達できない域だなって。


shoji:僕の中でOguriは人知を超えた成長速度を持つ人間なんです。ダンスでもそうだし、朗読では今回すごく“引っ張られている”という感覚を強く感じます。Oguriの言葉で踊りが引き出されていくのですごく踊りやすいです。前回はそういう感覚はなかったので、またなんか新しい能力をゲットしたのかなと思うとこわいですね。負けたくないなと思います。(笑)


瀬戸山:2人は本当にタイプが違うしダンスも本当に違う。Oguriさんはきっちり表現するということをやっていて朗読の時も姿が美しいんです。考えて形を整えて、さらに今回は中身を燃やしている感じ。人間的な部分が前回よりも伝わるようになっていると思います。shojiさんは本当に感情の生き物で…(笑)


2人:あははははは!


瀬戸山:とにかく開くのが上手いし勇気がある。ただ開きすぎちゃってダダ漏れているものがあるので(笑)、今回は表現として整えることができていると思います。表現を保ちながら感情を爆発させる、ギリギリのラインを攻めたいですね。舞台の内容も少しダークなので、2人が普段見せないもの、でも絶対にそれぞれの中には持っているものを見せていけたらいいなと思います。同じ台本でも、それぞれの回で全然ちがう作品になるんじゃないでしょうか。




<ここからはshojiさん、Oguriさんお二人のインタビューをお届けします>


●お二人とも今回はもっと中身を掘り下げる作業ができているということでしたが、登場人物に対して見えてくるものはありましたか?


Oguri:主な登場人物はジキル、そしてハイド。そしてジキルの友人の弁護士・アタスンがいて、物語はアタスンの目線で語られていく。踊り手はジキル/ハイドとして登場するんですが、どちらにも共感できるところと、自分はこうはしないなというところがある。じゃあなんでこういう行動に至ったんだろう?と考える作業が今回はすごくできていて、本当に新しい作品に挑むくらいの勢いでやっています。


shoji:初演から今までの間に他のお仕事でお芝居をやらせていただいたり、レッスンを受けたりすることがあったので、今回はアタスンの歩んできた人生を書き出してみたり、台本の裏にある登場人物の人生を辿りながらそれぞれの関係性を追えているというか。ジキルとアタスンにはこんな思い出があったから、ここでこういう会話をしているのか、とかしっかり考えられるようになりました。僕はお芝居の世界にはまだまだ鼻が入ったくらいだと思うんですが(笑)。でもそうやって一つずつ作品に踏み込んで入れている感覚があります。



●台本は前回と同じなんですか?


Oguri:ちょこちょこ変わってるかなと思います。


shoji:基本は一緒ですが、今回はダンスが増えています。前回はジキル/ハイド役だけが踊っていたんですが、今回は朗読のアタスンも一緒に踊るシーンがあります。



ダンスが増えているんですね!朗読をしていて、踊りたくならないのかなと思っていたんです。


shoji:あはははははは!


Oguri:2人で踊るシーンは1人で踊っている以上に楽しいですね。


shoji:うんうん。だいぶ見どころが増えていると思います。



●やっぱりダンスもs**t kingzでやってるものとは違う感覚なんですか?


shoji:シッキンでこんなに振り付けが決まっていない時間が多い作品はないかもしれないです。


Oguri:決められないんですよね。言葉に合わせて踊っているので、リズムもタイミングも毎回変わるので。


shoji:そう。これは悪いことではなくて毎回Oguriの朗読が違うんです。始まり方が変われば途中の話のテンポも変わってくるので、「今回この人いつもより怒っているかも?」とか感情を感じ取りながら踊りにしていくので、瞬間的な反応みたいなものはダンスとしても挑戦的ですね。



●めちゃくちゃナマモノですね。演奏も生演奏ですし。


shoji:演奏もすごい面白くて、ドアの開閉音とか不穏な感情の音とか、効果音などもエレキギターで出していくですよ。本当にギターのお二人も思考錯誤されていて、この間なんてポイントカードを使って弦を弾いていて!(笑笑)「ちょっとちょっと待ってそれなに!」って聞いたら、「いまのところこのカードが一番しっくりくる音が出るんですよ」って言ってて(笑)。それくらい演奏のお二人も僕たちの話し方を感じて、一番合う音を出そうと奮闘してくださっていて。それも見ていてすごく面白いと思います。もしかしたらポイントカードを使っているかもしれないです(笑)。



見どころ満載ですね!(笑)。s**t kingzのパフォーマンスもドラマ性があるんですが、やっぱり“言葉で表現する”というのがお二人にとっては一番のチャレンジだと思います。今回もやはり難しいですか?


Oguri:言葉は微妙な聞こえ方や、自分が本当に心でこう感じているからこういう音が出るみたいな微妙な“揺れ”というのが、踊りよりも繊細だと思いました。ダンスももしかしたら同じくらい繊細なのかもしれないけれど、ずっとやってきたことなので身体に染み付いている。やればやるほど細かい違いが見えてくるし、難しい。だからこそ楽しかったり、挑戦できている喜びがあります。



●例えばダンスだと長年の経験で「こう動けばこう見える」みたいなことがわかるけれど、声は思っているものが出なかったりするものなんですか?


shoji:そうです。そのちょっとした声色や響きの違いがミスリードに繋がってしまうんですよ。言葉ってダンスと違って、ストレートに意味が伝わるので。だから繊細なところまで気をつけないといけない怖さがありますね。ダンスならお客さんが考える余白を残しても、一人一人感じ方が違ったりすることが楽しみ方だったりするけれど、言葉はお客さんがそのまま受け取ってしまうものだから。そういうことをすごく感じます。





ダンスはまだいろんなものに出会っていないだけ。


●この舞台ではダンスと朗読劇が合わさって新しいエンタメが完成したわけですが、お二人も可能性をどんどん広げている感覚があるんじゃないでしょうか。


shoji:本当にいろいろな経験をさせていただいて、可能性を感じさせてもらって、すごく幸せです。僕たち自身ダンスが好きでこれまで続けてきたわけですが、それはダンス自体に惚れ込んだこともあるけれど、ダンスを通して素敵な人や作品に出会えたから、ダンスがどんどん好きになっていったんだと思います。


Oguri:可能性を広げたというより、もともとあったものに気づいてきたんだと思います。ダンスでこんなこともできるんだ!って。それはダンス自体もそうだし、自分自身の可能性でもあるなって。自分自身も成長できています。


shoji:僕らがやっているストリートダンスって生まれてからまだ100年も経っていないエンタメ。だからまだダンスがいろんなものに出会ってきていなかっただけだと思うんです。ミュージカルと漫画やアニメが出会って「2.5次元」というエンタメが生まれたように、ダンスにも新しい出会いと可能性が待っているはず。この朗読劇×ダンスのスタイルも、これからいろんなダンサーが挑戦したらすごく面白いと思います。



先駆け、じゃないですか!


shoji:先駆け、たい!


Oguri:笑笑



●そんなダンス界を先駆けるお二人から、将来パフォーマーになりたい子たちへのメッセージをいただけますか?


Oguri:いっぱい試していっぱい悩んで、といかく場数と踏んでいくこと。日々の継続、数がそのまんま舞台に出ると思います。毎日毎日試行錯誤して、一緒に苦しみながら頑張りましょう(笑)。


shoji:なにか新しいチャレンジをしようとすると、必ずそれを否定的に捉える大人が出てくることがありますよね。そういう時はアドバイスは受け取りつつ、先輩方に好かれることより、未来の人達のためにエンターテインメントを創ることを大切にしてほしい。僕自身もそういう考え方で、新しいことにチャレンジすることに意味があると思っているので。



●最後に、公演を楽しみにしている読者にこれだけは言っておきたい!ということはありますか?


Oguri:ライブで舞台を観る機会が少なくなっているいまだからこそ、その楽しさを全力で感じに来ていただきたいです。こちらも全力で返します!


shoji:生の声にその場で生まれたダンス、そこに生の演奏が加わった、本当にその瞬間にしか存在しない、生き物みたいなエンタメなので、ぜひ体験しに来てほしいです。



《 Profile 》


s**t kingz (シットキングス)

ダンサー・俳優・クリエーター・演出家・振付師

shoji・kazuki・NOPPO・Oguriの4⼈で構成される、世界が注⽬するダンスパーフォーマンスグループ。「あさイチ」(NHK)、「スッキリ」(NTV)、「めざましテレビ」(CX)で特集が組まれ、「音楽の日」(TBS)、「関ジャム 完全燃SHOW」(EX)、「MUSIC FAIR」(CX)には、バックダンサーではなくアーティストとして出演。1月に全曲オリジナル楽曲の映像作品<見るダンス映像アルバム>「FLYING FIRST PENGUIN」を発売し、「ミュージックステーション」(EX)に単独出演を果たす快挙を達成。オリジナルの舞台公演は毎回⼤好評。また、国内外の著名アーティストの振付を約230曲以上⼿がけるなど、常にエンターテインメントシーンの最先端で活躍し続けている。



持田将史 / shoji(モチダショウジ / ショージ)

ダンサー・振付師 ・演出家 ・俳優

s**t kingzのリーダー。類まれなる発想力とそれを実現する実行力はダンス界だけでなく、多くの業界関係者に影響を与えている。独自のダンススタイルを確立し、振付から演出まで幅広く手掛ける。俳優・持田将史(もちだしょうじ)として、2020年にはTBS日曜劇場『半沢直樹』、NHK連続テレビ小説『エール』に出演するなど、役者としての活動にも注目が集まる。



小栗基裕 / Oguri(オグリモトヒロ / オグリ)

ダンサー・振付師 ・演出家 ・俳優

ロック・ジャズ・バレエ・タップなど幅広いジャンルをカバー。スキルだけでなく、見るものを惹きつけるグルーヴが魅力のダンサー。去年惜しくも新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったブロードウェイミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリーSeason3』ではベルナルド役で出演が決定していたなど、ダンスの枠にとらわれず、表現力を活かした演劇の舞台でも俳優・小栗基裕として活躍中。



瀬戸山 美咲(Misaki Setoyama)

劇作家 ・演出家・脚本家

劇作家・演出家。2001年、ミナモザを旗揚げ。2016年、『彼らの敵』で第23回読売演劇大賞優秀作品賞受賞。近年の作品に『THE NETHER』『グリーンマイル』(上演台本・演出)、『あの出来事』『ジハード-Djihad-』(演出)、『埒もなく汚れなく』『現代能楽集X 幸福論』(作・演出)、『オレステスとピュラデス』(作)など。第26回・第27回・第28回読売演劇大賞優秀演出家賞、第70回芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。『アズミ・ハルコは行方不明』『リバーズ・エッジ』など映画脚本も手がける。



公演概要

『My friend Jekyll』(マイ フレンド ジキル)


♦︎公演日程

【東京公演】シアタートラム 

2021/04/21 (水) ~ 2021/04/25 (日)

【大阪公演 】ABCホール

2021/05/22 (土) 〜 2021/05/23 (日)

♦︎主演:持田将史(s**t kingz)/ 小栗基裕(s**t kingz)

♦︎上演台本・演出:瀬戸山美咲

♦︎料金:全席指定¥8000(税込)

※未就学児入場不可(小学生以上チケット必要)

※枚数制限:1公演4枚まで

♦︎企画制作:アミューズ / S KAKERU



執筆者 : 井上麻子 /Asako Inoue

食べること、つくることに関する取材が多め。舞台芸術、スポーツ観戦、音楽イベント、卵など、“生”で楽しめるものはたいてい好き。SAKE DIPLOMAの資格を持ち、「日本酒のおねえさん」としてときどきポップアップSAKEバーも開催している。