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  • 執筆者の写真松村 蘭(らんねえ)

「面白い人生、面白い人でありたい」〜宝塚退団後に見えてきた、仙名彩世が進む道



2019年に宝塚歌劇団を退団後、元花組トップ娘役として培ってきた華のある歌やダンスを武器にミュージカル界で活躍を続ける俳優・仙名彩世さん。

舞台『五番目のサリー』のお稽古の合間を縫って、11月に開催予定の『Salon Concert』へ込めた想いや、最近ハマっているというミニチュアフードの魅力などを伺いました。約1時間のインタビューを通して見えてきたのは、仙名さん独自の“面白い”価値観でした。




ストレートプレイへの初挑戦

 

●舞台『五番目のサリー』のお稽古真っ最中の仙名さんですが、初めてのストレートプレイはいかがですか?


お芝居の中で、気持ちの変化で物語を運んでいくという初歩的なところに、今改めて立ち戻っています。ミュージカルを主に活動している私にとっては、歌や踊りがないと不安になることもあるんですね。演出の荻田さんは「ミュージカルは音楽に助けられて気持ちを変化させていく部分も多いけれど、今回はそれがない。だからこそ想像力を働かせて自分で作っていかなきゃいけない」とおっしゃっていて、本当にそうだなと。荻田さんの演出を受けるのも今回初めてなんです。いろんな方から「荻田さんの世界観があるんだよ」と聞いていたのですが、今まさに「あ〜このことだっだのね〜!」と感じています(笑)。荻田さんって、稽古場で誰よりも動いて誰よりも喋るんですよ!(笑) 説明が本当にわかりやすくて、一緒の現場にいるだけで面白いんです。すごくチャーミングな方だなあと思います。



●仙名さんは五重人格の主人公サリーの人格の一人、ベラを演じます。サリーを演じる彩吹真央さんとは初共演ですね。


彩吹さんはみんなに対して自然に話しかけてくださって、一緒にいて安心する方です。お芝居ではものすごい量のセリフと役を担っていらっしゃるので本当に大変だと思います。それでも膨大な課題を日々どんどんクリアしていらっしゃる姿を見て、かっこいいなあと。私はサリーの中にある一つの人格の役なので、彩吹さんと一緒に同じセリフを喋ることもあるのですが、そういうときもすごく歩み寄ってくださるんです。




慣れ親しんだ宝塚ホテルでのディナーショー

 

●2021年8月に延期となっていた宝塚ホテルでの『Salon Concert』が、いよいよ11月に開催されます。


宝塚ホテルは事あるごとに通った慣れ親しんだ場所です。最後に行ったのは、宝塚を卒業したときに開催したコンサートでした。ホテルは2020年に改装されているので、新しくなってきっとまた違う素敵な空間になっているんだろうなあと期待しています。東京になかなか来ることができない方もいらっしゃるので、関西で開催できるというのはすごくありがたいことですね。



●2020年、2021年と東京會舘で開催した『Salon Concert』はいかがでしたか?


2020年は舞台の公演中止という出来事があったので、お客様の前で歌えること自体がすごく貴重な時間でした。なので、みなさまにとっても特別な時間であってほしいなという気持ちを込めて歌いました。去年のコンサートは宝塚を卒業したばかりだったこともあって、新しい曲に挑戦したいという想いが強くありました。なので、あえて宝塚時代の曲をあまり入れなかったんです。今年も「これ本番に間に合うかな?」というくらい自分にとって課題のある難しい曲を選んでしまったので、直前まで苦戦しました(笑)。ディナーショーを観に来てくださる方は、長く応援してくださっている方や、音楽が好きな方、会場の空間が好きな方など、みなさん何かしら好きなものがあって来てくださると思うのでとても温かいんです。私が発するものを受け入れてくださるように感じるので、ある意味チャレンジの場にもなっています。



●ホーム感があって素敵ですね! ちなみにどんな曲に挑戦されているのでしょうか?


私、80年代や90年代の日本のポップスも結構選ぶんですよ。松田聖子さんや山口百恵さんの曲も好きです。その世代の方が懐かしみつつ私の個性で歌うところも楽しんでいただけたらいいなあと。これまでミュージカルばかり歌ってきたので、印象的なメロディラインが特徴のポップスを自分でどう調理するかという課題があります。みなさんが知っている曲だからこそ壊しちゃいけないという緊張感もありますね。他にも、世界中でいろんな方が歌っているBeatlesさんの「Yesterday」やミュージカル『アニー』の「Tomorrow」も歌わせていただきます。アコースティックギターとピアノによるオリジナルのアレンジを考えているので、こちらも楽しんでいただけたら。





驚きと癒やしを与えてくれるミニチュアフード

 

●『Salon Concert』の会場では、仙名さんが手作りされているミニチュアフードの展示があるとか?


そうなんです! 普段はオフィシャルサイトやInstagramで発信しているのですが、ぜひ実物を見て欲しいなと思って。



●ミニチュアフード作りを始めたきっかけは?


宝塚時代から手先を動かす作業が好きで、いつかミニチュアフードを作ってみたいなと思っていたんです。でも時間と労力がかかることもあってなかなか手を出せなくて・・・・・・。去年の自粛期間中に「今だ!」と思って始めました。そしたらすごく楽しくて! ちっちゃいものって、精巧に作られていればいる程「これを人間が手で作ったんだ」という感動があるんですよね。自分で作り始めてから、ミニチュアフードは驚きと癒やしになるということを実感したので、みなさまにとってもそうなったらいいなと思ってInstagramの発信も始めました。



●ちなみに、一作品作るのにどれくらいの時間がかかるんですか?


時間は考えないようにしています(笑)。基本的に粘土で作るのですが、粘土が乾かないと次の作業に移れないんですね。なので粘土の具合を見ながら同時進行でいろんなものを作っています。例えば練りきりの和菓子のミニチュアを作っていたときは、たくさんの色の粘土を用意してそれらを組み合わせていきました。粘土は乾くと使えなくなってしまうので、とにかく無駄にしないようにとひたすら作り続けました。



●何を作るかはどうやって決めているのでしょう?


美味しそうなものを作りたいなと思っています。なので、デパ地下に行って美味しそうなものを見つけると、「何が入っているんだろう」「何を使ったら作れるんだろう」と考えながら食品を見てしまうんです(笑)。私は宮城県出身で「みやぎ絆大使」を担ってるので、宮城の食材を取り入れたものも作りたいなと考えています。これまでに笹かまぼことはらこ飯を作りましたが、せり鍋やきりたんぽ鍋も好きですし、宮城は魚介類も美味しいので牡蠣とかもいいですね!





宝塚退団後の日々を振り返って

 

●宝塚を退団されてから約2年半が経ちました。退団後の日々を振り返ってみていかがですか?


新しい出会いがいっぱい広がっていることに、すごく希望を感じます。宝塚出身の私にとって、作品毎にカンパニーが変わるというのは新鮮なことなんです。みんなで想像力をぶつけ合って真剣に一つのものを作り上げるということが本当に楽しいですし、ずっとご縁が続いたらいいなと思える方ばかりなんです。



●宝塚時代とは環境が変わって新鮮なことも多いのでは?


知らない舞台用語がいっぱいあったり、カンパニーのキャストがダンスリーダーやボーカルリーダーを担って公演中もアドバイスして下さったり、宝塚にはない文化に驚きました。舞台の足下には位置取りのための番号が振ってあるのですが、その広さの感覚が全然違って! 宝塚では30番くらいまで細かく番号があるのに、外の舞台では6〜8くらいまでしかなくて間隔がものすごく広いんですよ。お稽古が終わるとみなさん次の現場でのお仕事があったりして、割とすぐに帰られるというのも新鮮でしたね。宝塚時代は「今から自主稽古あるかな?」とみんなの様子を伺いながら帰っていたので(笑)。



●退団後の『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』や『GOYA』など、仙名さんの舞台上の姿は毎回新鮮です。


ありがとうございます。新しい面を見せられないと終わりだなって思っちゃうんですよ。作品や役が違っても、同じ人が演じることで同じテイストが出てしまうということがあるので、「どの役でも同じだと思われないようしないと」という危機感は常にあります。作品を終えても「もうちょっとできたんじゃないかな」と思うこともありますし、完全な達成感を得るにはまだまだですね。その点、TipTapさんの公演『Play a Life』(2021年)ではすごく充実感がありました。3人芝居だったこともあってお稽古もすごく濃密で、私の感覚に近いものがあったんでしょうね。



●12月には再びTipTapの新作オリジナルミュージカル『20年後のあなたに会いたくて』の出演も控えています。


TipTapさんの舞台にまた呼んでいただけるということが、純粋に嬉しいです。私が演じるのは余命宣告される妻という役で、これまでにあまりなかった役どころ。現在の時間を生きている人たちのお話なので、親しみやすい作品だと思います。TipTapさんの作品は、役名がついていなくて一人称で語られることが多い印象があります。だからこそ、誰にでも自分のこととして感情移入しやすいのかもしれません。きっと、今回の作品もみなさんの中に何かしら当てはまる部分があると思います。今から楽しみです!



●舞台やコンサートなど様々なイベントが控えていますが、これから先どんな活動をしていきたいと考えていらっしゃいますか?


以前の私は、“楽しい”という言葉に対してちょっとした葛藤がありました。例えば「楽しんでやろう」「最終的には自分が楽しめばいいから」と声をかけられたときに、何だかしっくりこない時期があったんですね。“楽しい”という言葉が逆に足枷になってしまったんです。そこで私はどうしたいのかと考えたときに、“面白い”方へいきたいなと。コメディ的な要素というよりは、自分がそれを面白いと思えるかどうかということです。私にとっては、舞台のお仕事もミニチュア制作も面白いからやっています。だから“楽しい”という文字を“面白い”に変換しちゃおうって。面白い人生でありたいし、面白い人でありたい。自分が面白いと思える方向に進んでいきたいなと思います。




《Profile》


仙名彩世(せんな・あやせ)


宮城県出身。宝塚歌劇団に94期生として首席入団。2017年に花組トップ娘役に就任し、『仮面のロマネスク/EXCITER!!2017』、『あかねさす紫の花/Santé!!~最高級ワインをあなたに~』、『ポーの一族』など、数多くの作品に出演。2019年「CASANOVA」をもって、宝塚歌劇団を退団。退団後は、『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』、ミュージカル『Play a Life』、ミュージカル『ゴヤ‐GOYA‐』、音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』などに出演。今後は「『五番目のサリー』 ~The Fifth Sally~」、『仙名彩世 Salon Concert』、ミュージカル『20年後のあなたに会いたくて』、ミュージカル『ミス・サイゴン』エレン役の出演を控えている。



文・写真:松村蘭



今後の出演情報★

「『五番目のサリー』 ~The Fifth Sally~」


原作:ダニエル・キイス著「五番目のサリー」(ハヤカワ文庫)

脚本・演出:荻田浩一

音楽:TAKA


出演:彩吹真央、仙名彩世、小野妃香里、藤田奈那、中河内雅貴、大山真志、荒井敦史、井澤勇貴、小寺利光、駒田一


公演日程:2021年10月21日(木)~10月30日(土)

場所:よみうり大手町ホール

チケット:9,800円(全席指定/税込)


公式サイト:https://music-g-h.com/stage/sally

公式Twitter:https://twitter.com/The_Fifth_Sally(@The_Fifth_Sally)




『仙名彩世 Salon Concert』


日時:2021年11月3日(水・祝)

   ランチ  11:30~ / ショー 13:00~

   ディナー 17:00~ / ショー 18:30~


場所:宝塚ホテル 2階「琥珀」

チケット:25,000円(お食事・お飲物・ショー・消費税・サービス料込み)


公式サイト:https://www.hankyu-hotel.com/hotel/hh/takarazukahotel/events/2021_ayasesenna




TipTap新作オリジナルミュージカル『20年後のあなたに会いたくて』


作・演出:上田一豪

作曲:小澤時史


出演:田村良太、仙名彩世、彩吹真央、吉野圭吾、白木美貴子

   池谷祐子、敷村珠夕、中村翼


公演日程:2021年12月9日(木)〜12月12日(日)

場所:東京芸術劇場シアターウエスト

チケット:9,000円(全席指定・税込)


TipTap公式サイト:http://www.tiptap.jp



 

執筆者:松村 蘭(らんねえ)


演劇ライター。1989年生まれ。埼玉県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。出産を機にIT企業を退職し、ライターへ転向。仕事のお供はMacBook AirとCanon EOS 7D。いいお芝居とおいしいビールとワインがあるところに出没します。 Twitter:@ranneechan


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