劇団四季創設者で演出家の故・浅利慶太さんが遺した名作を上演し続ける浅利演出事務所。その
レパートリーの中でもひときわ上演回数が多く、特別な想いを受け継いで再演を重ねられてきた『ミュージカル李香蘭』が、今月23日より東京・自由劇場で上演中。『ミュージカル李香蘭』(以下、『李香蘭』)は1920年頃から1945年までを描き、満映(満州映画協会)の「中国人スター」となったひとりの女性「李香蘭」の半生を通じて、悲劇が繰り返された昭和という時代を浮き彫りにする。ものがたりは終戦後の中国から始まる。香蘭は中国人でありながら日本に協力したとして、祖国反逆者=漢奸の罪に問われる。「殺せ! 漢奸、裏切り者を」と罵る民衆の声の中、香蘭は自身が日本人であることを告白する。日本人山口淑子がいかにして歌姫李香蘭となったのか、その名を受けた幼少期へさかのぼる。香蘭の義理の姉・李愛蓮、香蘭が兄のように慕う杉本、愛蓮の許婚である王玉林らを取り囲む目まぐるしい運命。中国で生まれ日本人として生きた、もう一人のよしこ・川島芳子が観客をいざない、昭和の戦争とは何だったのかを問う。
今回は劇場入り間近となったある日の稽古場を取材し、李香蘭役の野村玲子さん、李愛蓮役の樋口麻美さん、アンサンブルの小野田真子さんと高山裕生さんにインタビューさせていただいた。
稽古場レポート 激動の時代、その世界に存在する俳優たち
この日の稽古は浅利演出事務所の本拠地「代々木アトリエ」で行われた。自由劇場の舞台とほぼ同じ大きさの稽古場で、舞台装置が置かれる場所にバミリをし、実際の位置関係を再現している。出演者含め全員がマスクを着用しての稽古。換気の際には若手男性キャストがレッスンバーに飛び乗って頭上の位置にある窓の開閉を行う。年季を感じさせるが清潔な稽古場に、開始前から俳優たちの活気が漲る。
稽古場に入ると既に発声練習が行われていた。これは自由参加のようだが、それぞれが身体を整えつつ声はピッタリとそろっており、稽古に向けて集中力が高まっていくのがわかる。いよいよ開始時刻。全員揃って先ず前日の稽古の反省をし、これからの稽古に活かしていけるよう、各々の気づきや課題を共有した。
正面にはクリエイティブスタッフの机が一列に並ぶ。中央にはタイトルロールであり今回の再演版演出も兼任する野村玲子さんと、そのサポートをする川島芳子役の坂本里咲さんら。
稽古場正面に今も置かれる浅利さんの椅子と写真パネル。壁には「慣れ・ダレ・崩れ・去れ!」の言葉が貼られている。
壁には日本の領土の変遷地図がずらり。
この日の稽古は通し稽古。物音が消え、全員の集中力が高まったところで、パン! と手をたたく音から始まった。稽古場を囲むように複数設置されたスピーカーから前奏曲が流れ、李香蘭と彼女を取り巻く時代が動いていく。香蘭ら漢奸罪に問われる人々を裁く裁判のシーンから始まり、満州国に夢を抱き中国と日本の友好を信じた人々や、暴走する関東軍、香蘭の輝かしい活躍と亡くなっていく特攻兵たちなど、史実に基づきながらもドラマチックな場面が繰り広げられる。
すぐにでも開幕できるのではと思わせる気迫と完成度でシーンが進む中、舞台袖の部分に並べられた椅子では待機中の俳優が一斉に影コーラスをする姿も見られた。
軍服やダンサーなど一部の役は衣裳付きで、銃や提灯、手持ちの国旗などの小道具も実際のものを使用して行われていた。
通し稽古ののち、ノート(ダメ出し)があり、野村さんや坂本さんが細かなところまで改善点を指摘していく。二人は自分の出番以外の場面では芝居を前から見てチェックし、稽古後はそれぞれの台本を並べ、気づいたことを共有しながらノートを進めた。坂本さんからは「死刑」「帝国主義」「真実」など、作品において大切な単語をきちんと発音するよう指示があった。俳優たちはひとつひとつ受け止め、その場で何度か発音してアドバイスを受ける。野村さんからは演技にリアリティを求める指示が多くあった。中国人学生による抗日運動のシーンに対しては、「学生たちは日本が嫌いなわけではない。この時の日本が狂っていて、日本がそれに気づけばうまくやっていけるんじゃないかという気持ちがあるよね」と示唆。また、『ウェストサイド物語』のマリアを演じた際の経験から、軍人役の俳優へ銃口の向け方を実演してみせる場面もあった。
「戦争をリアルに捉えている世代のお客様が観にいらっしゃったときに、俳優の言葉が薄かったら違和感を持たれる。痛みを、悲しみを、願いを、本当に感じて」と呼びかける野村さん。
ノートが終わると、特に課題が多かった「昭和モンタージュ」「日中戦争モンタージュ」場面の返し稽古が行われた。時代が次々と転がっていく様を順を追って見せていく長いシーン。台詞の言い方や自分の出番までの心持ちなど、それぞれ細かに修正しつつ、意見を出し合いながら進めた。
返し稽古は短めに終わり、翌日の流れを確認して終了。その後は個別メンバーに向けて、振付やコーラスの指導が続いた。
小野田真子さん 大切な人が殺されたとしたら
浅利演出事務所のレパートリーの中では『ユタと不思議な仲間たち』モンゼ役や『夢から醒めた夢』アンサンブルで出演してきた小野田真子さん。『李香蘭』は今回が初参加で、漢奸に憤る中国人や売られる娘、ダンサーなど様々な役を演じ、指先まで感情のあふれる演技が光る。
●稽古中は言葉についての指導が多くありましたね。
浅利先生の作品は何よりも言葉を大切にしています。言葉をお客様へ届ける、これが基本です。
なので、稽古が始まってもしばらくは、歌を歌わずに台詞を語る稽古をしたんです。言葉のニュアンスを歌で表現する必要があるので、言葉の実感を持ち、自分の言葉として語れるようになるまでは歌いませんでした。
特に『李香蘭』は、私にとっても、観劇いただくお客様にとっても馴染みのない言葉が多く出てきます。そのような言葉をお客様にもしっかりと理解していただけるよう、言葉の一つ一つを大切にしたいです。
●稽古場の雰囲気はいかがですか?
李香蘭の作品は正直、明るい話ではありません。なので稽古中に胸が苦しくなることもしばしばあります。だからこそかもしれませんが、稽古の時間外では、俳優のみなさんはとても明るく接してくれます。私はこの作品への参加が今回初めてなのですが、そんな私にもみなさんがフランクに接してくれて、意見を言い合える環境があり、みんなで一緒に作品を作っている感じがとてもします。
●この作品に取り組むにあたって、どのような準備をされましたか?
満洲国のことや、日中戦争のことなどは、もちろん学生時代に習っていたことではありますが、改めて一からYouTubeを観たり、本を読んだりして勉強をしました。いまYouTubeで「満洲国」と調べると、多くの関連動画が出てくるんです。この期間でいろいろな動画を見ましたが、特に私の心に残ったのは、実際に当時満州で生活されていて、日本に帰国された日本人の女性の方のドキュメンタリー映像でした。「もうこの動画を観たくない」と思うほど心が痛みました。そういった感情や、当時の人たちの生活や苦悩を思い浮かべながら芝居をしています。
●憎しみや悲しみを生み出す。
漢奸を責める民衆を演じるシーンで、「殺せ殺せ」という台詞がありますが、最初はどうしても殺意が湧かなかったんです。そこで、一旦役とは切り離して、自分自身は何を考えたら一番憎しみや悲しみが生まれるかを考えました。私なりの答えは、自分の大切な人が殺されたとしたら、大切な人が自分と引き離されて虐待を受けていたとしたら......そんなことを想像し、そこで湧き上がった憎しみを芝居に結びつけました。「自分の中で本当に心から湧く感情でないと嘘になる。だから感情に嘘をつくな」というのが演出家の教えです。私は今回、自分の中で心から生まれる感情を役と重ね、稽古を繰り返すことで、役としての感情が出てくるようになってきました。
●お客様の中にも、戦争を知らない世代が多いと思います。 特に注目してほしい場面はどこでしょうか。
今回演じさせていただいく役の中に「売られる娘」という役があります。これは、貧乏な家庭の娘が、家族の為に自身が身売りされることを覚悟し、願いをこめて歌うシーンです。これは過去たった100年も経っていない日本で実際に起きた話です。このシーンを演じるにあたって、演出家からは、「ここで歌うフレーズは短いけれど印象はかなり残るから、絶対に芝居に嘘がないように」と言われました。当時の彼女の心情を理解し、嘘をつかず、精一杯祈りを込めて演じますので、是非注目して観ていただきたいです。
高山裕生さん あの時代に生まれていたら、僕らが戦争に行って死んでいく運命だった
浅利演出事務所の『ユタと不思議な仲間たち』、『夢から醒めた夢』に出演し、ダンサーとしても活躍中の高山裕生さん。今回初参加の『李香蘭』では、学徒兵や中国人学生、海兵など、パワフルなダンスや溌溂とした佇まいが印象的だ。
●高山さんは現役大学生だと伺いました。稽古と学業を両立されているんですね!
稽古が終わって家に帰ってから、授業の動画を観たり課題を提出したりしています。稽古後は肉体的にも精神的にもへとへとになるので両立は厳しいですけど(笑)、頑張っています。
●お稽古の休憩時間も皆さん真摯に向き合っていて、稽古場にいる時間すべてが稽古という雰囲気を感じました。
この作品を一人ひとりが良くしたいと思っているので、休憩時間も稽古で見つかった反省点を修正していることが多いですね。誰かにこうしなさいと言われたわけではないのですが。
●将校や抗日運動をする学生など、迫力のある役を多く演じられていますね。芝居に向かうエネルギーはどのように湧いてくるのでしょうか。
李香蘭の書籍や作品で扱う当時の資料を見て勉強し、悲惨な出来事が実際あったのだと知ることで、時代に対する怒りが自然と湧いてきました。出演経験のある先輩方に教わりながら、その怒りを芝居に乗せていく稽古をしました。僕はこの作品で中国人も日本人も演じています。全幕通して演じる役は10役以上。初めは切り替えるのが難しく、頑張ってそれぞれが思う対象に怒りや思いをぶつけていたのですが、稽古を重ねていくうちに、その役になると自然と内からその役柄としての感情が出るようになってきました。
海兵たちの生活を歌う「月月火水木金金」ではアクロバティックな動きが多く、はじめは苦労したという高山さん。「全て意味のある振付であり音楽なので、お客様にとってはもちろん、役者自身も李香蘭の世界に入り込みやすいです」
●稽古では実際の衣裳や小道具を使われていましたね。
軍服やパラシュートは、実は本物なんですよ。軍服の着こなしについてはたくさん指導していただきました。航空隊の人は腕章を着けているけれど演習の時は外しているだとか、敬礼一つとっても陸軍と海兵では腕の角度が違ったり......。本物に近づけなければという思いでいつも取り組んでいます。
●この作品で扱う時代についてたくさん勉強されていると思いますが、その中で印象に残っていることはありますか?
僕は二幕で、遺書を読む兵士の中のひとりを演じさせていただいています。その遺書が載っている資料「きけ わだつみのこえ」には特に影響を受けました。その資料には名前や出身校、どのように亡くなったかなども載っています。劇中で読む文章はほんの一部なのですが、遺書を読むと自分たちと同じくらいの年齢で、日本の未来をしっかり考えているんです。それを読んで、自分の読む手紙をもっと深く理解しようと思いました。軍人が日本を支配していき、負のスパイラルに陥ったという事実。いま世界で起きていることとも照らし合わせて何かを感じていただけたらと思います。また、自分たちがその時代に生まれていたら、僕らが戦争に行って、死んでいく運命だったはず。僕たち世代にはそこが一番戦争をリアルに感じられるところであり、戦争を知らない自分たちが忘れてはいけないことだと思います。
銃を構える高山さん。「実際の銃を使っているので重くて大変ですけれど、その重さがあるから、時代の人々の感覚を実感できます」
樋口麻美さん 時代の実感を体現する、果てしない作業
樋口麻美さんは李香蘭の義理の姉である李愛蓮を演じる。香蘭を本当の妹のように愛しながらも、日本の人々の行動に疑問を抱き、親日の家族を捨てて反抗する力強い女性だ。
●当時の中国人を演じるにあたり、どのように役作りされていますか?
日本人が作ったミュージカルなので、中国人のアイデンティティは理解しつつ、その時代の日本人から見た中国人という目線で理解しています。歴史や当時の中国関連の資料は読み漁っていて、以徳報怨=徳を以て怨みに報いようという考えに至る作品なので、その根本にある中国人のメンタリティは常に意識して、腹を据えて演じています。
●以前『李香蘭』と同じく昭和三部作である『南十字星』ではインドネシア人のリナを演じられました。自分とは違う国の人物を演じるという点で、活かせるところはありますか?
あります! というか、普通の日本人を演じた経験のほうが少ないかもしれません。その国の文化背景や歴史を踏まえて自分の体に落とし込む作業は、国が変わっても同じです。自分の生きてきた人生って本当に些細なことしか起こっていないけれど、劇に出てくる人はものすごくドラマチックだし、必ずバックボーンがある。だから、そこに自分を持っていくことが、役者がしなくてはいけない作業だと思います。自分の経験してきた引き出しだけでは追いつかないし、大きなストーリーを作っていくことはできない。『李香蘭』において、浅利先生が作られた中国と日本の物語はものすごく深くて複雑なので、その時代のど真ん中に生きた香蘭と愛蓮の引き裂かれていく様は演じていてとても感情が揺さぶられます。。今この瞬間も、ロシアとウクライナで同じように運命に引き裂かれている人たちがきっといると思うので、演じるというのではなく、全身全霊で役に立ち向かっていますね。歴史の実感、時代の実感、作品の実感......果てしない作業です。
●稽古の中で深めていくものでしょうか?
そうですね......稽古場にふらっと行っていきなりその時代の芝居をすることはできないので、稽古場に入る前からうんと勉強して、今も映画や本に触れてイメージを膨らませながら稽古に臨んでいます。常にその時代に没入しているという感じでしょうか。
漢奸に怒りと憎しみを抱く人々に対し、自分が日本人であること、日本を愛し、中国を愛していることを告白する香蘭。愛蓮は、中国人として日本への怒りと憎しみを持ちながらも、証人として力強く香蘭を弁護する。
●愛蓮を演じるうえで、難しいところはどこですか?
ドラマチックなところを全部握っているので難しいですね。私が出ていない日本がどんどん戦争へ突き進んでいく「モンタージュ」の場面は、12月8日(真珠湾攻撃)までの負のスパイラルをみんなそれぞれが歯車の一つとなって転がしていかないといけない難しさがあるのですが、愛蓮と香蘭のシーンはまた別の難しさがあります。香蘭が命名を受けて「二人は姉妹(きょうだい)」と誓った絆が、そのあと二人が登場する抗日学生運動の場面でもう引き裂かれます。そして次の二人のシーンでは再会して、日本の敗戦を伝える。作品のドラマの部分を引っ張っていく存在にならないといけないんです。
「大陸の女性の象徴であり以徳報怨につながるという、すごく大きな存在です」と、激動の時代の中でも揺るがない愛蓮の芯の強さを語る樋口さん。
●戦争が身近になってきたこの時期に、この作品が上演されますね。
私の世代は、戦争体験者が身近にいても、どこか戦争は歴史上の出来事のような感じがしていましたが、いま世界ではまた戦争が起きているという状況になって、社会の関心が上がっていると思います。これまでもよく、『李香蘭』を上演する時に戦争やテロが起きるって言われてきたのですが、去年の時点ではまさかこんなことが起きるなんて思っていませんでした。台本の端々の台詞が今とリンクするんですよね。日本は世界で唯一の被爆国だから、平和への願いをきちんと表していかなければいけないと思いますし、この作品を演じることの責任をこれまで以上に感じています。浅利先生が以前『李香蘭』の稽古場でおっしゃっていましたが、「今の時代の流れを背負いつつ、思いつつ、感じつつやるんだぞ」と。よりリアルにやらないといけないことをヒシヒシと感じています。
野村玲子さん 平和への願いを伝え続けなければ
初演からタイトルロールを演じ続けている野村玲子さん。浅利さんの演出を引き継ぎ伝えていく役割も務める彼女は、どんな思いでこの作品と向き合っているのか。
●この作品に主役・李香蘭として向き合ってきて、初演から31年経ったいま、どのような思いですか?
もう31年になるんですね......。初演の頃から作品に込められたメッセージというのは一貫して変わらず、平和への願いを込めて上演してまいりましたけれど、相変わらず世界では争いが絶えることはなく、やはり私たちは劇を通して平和を願うメッセージを伝え続けなければと思いながら、作品に臨んでいます。
●演出を引き継ぐうえで、香蘭への向き合い方は変化しましたでしょうか。
劇全体を俯瞰で捉えなければいけないという点でしょうか。いままでは俳優として、役としてそこに存在することに集中していました。香蘭としての存在に嘘がないようにということに徹していました。それが演出となると、作品の全体像を、客席からの視点で舞台全体を見るという全然違うポジションにいなければなりません。毎日、作品全体のメッセージをどういう風に届けるか、それを構築していくためにはどうすればいいのかというのを客観的な目を使って見ているところです。
通し稽古中は、野村さんと坂本さんが入れ替わりで演出卓に座り、全体を見、細かな発音やしぐさまで厳しくチェック。野村さんは俳優と演出の役割を行き来しながら稽古に参加していた。
●川島芳子役の坂本さんとお二人でノートを見比べながら相談されているのも印象的でした。
稽古が始まる前に台本を二人で読んで、演出家(浅利慶太さん)が言ってきたことを共通の認識として持つようにしました。だから、同じ目線で作品を見ている状態。時には李香蘭が出ているシーンに代役を立てて前から見ることもあります。
●戦争を知らない俳優に向けてどのようにお稽古をされていますか?
初演の時に私含め俳優みんな、演出家(浅利慶太さん)に呆れられました。「君たちは自分の国の近現代史を知らなさすぎる。何を学んできたんだ」と。結構衝撃的だったみたいです。でも近現代史って教科書の最後の方に出てきて、卒業間近に当たるせいか、あまり授業でもやらなかったんですよね。本当にお恥ずかしい話ですけれど、当時は「満洲国ってどこだっけ? 」というところからみんな勉強し始めたくらい。演出家は稽古ではいつも、「時代の実感、時代を生きた人々の実感をとにかく持ってくれ」と言っていました。だから、勉強するだけではなく、得たことを想像して腑に落としていくことが俳優の作業としてとても大事なんです。これは初演時から変わらずこの作品に参加するみんなが必ず通らなければならない道で、今回の若い出演者たちも同じことやっています。私自身も、この作業はまだまだ進行中です。
俳優やスタッフそれぞれが『李香蘭』やその時代と向き合い、勉強し続けている。この作品に込められた特別な思いは確実に受け継がれ、今年も私たちに届けられるだろう。戦争を知らない世代から戦争を知らない世代へ。今だからこそ伝えたい平和への願いを、ぜひ劇場で受け止め、共鳴してほしい。
《Profile》
小野田真子(おのだ・まこ)
昭和音楽大学ミュージカルコース卒業。幼少期よりヴォーカル、ダンス、演技のレッスンを始め、ミュージカルを中心に活躍。浅利演出事務所では2019年、2021年『ユタと不思議な仲間たち』にモンゼ役で出演し、伸びやかな歌声と可憐な立ち姿、チャーミングな演技が好評を得た。
高山裕生(たかやま・ゆい)
静岡県出身。幼少の頃からジャズダンス、ヒップホップ、ブレイクダンス、バレエなどを学ぶ。ダイナミックなダンスを生かし、浅利演出事務所では『夢から醒めた夢』『ユタと不思議な仲間たち』に続いて3度目の参加となる。
樋口麻美(ひぐち・あさみ)
小学校の頃からクラシックバレエ、ジャズダンス、タップダンス、ピアノ、声楽の基礎を学ぶ。高校生の時に劇団四季オーディションに合格。それ以来、『キャッツ』『ライオンキング』『ウェストサイド物語』『コーラスライン』『ウィキッド』『アイーダ』『夢から醒めた夢』『南十字星』『李香蘭』など数々の作品で主要な役を演じた。『マンマミーア!』日本初演ではソフィを、2011年からは母親役のドナ・シェリダンを演じ、両役を演じた世界初の女優となった。退団後は『WEST SIDE STORY in STAGE AROUND 』アニータ、ミュージカル『ジェイミー』ミス・ヘッジほか、コンサートやミュージカルなどで多岐に渡り活躍中。
野村玲子(のむら・りょうこ)
1981年劇団四季附属研究所入所。『エビータ』で初舞台を踏む。『オペラ座の怪人』『美女と野獣』日本初演のほか数々のミュージカルでヒロインを演じる。またストレートプレイでも『アンドロマック』『オンディーヌ』『アンチゴーヌ』などタイトルロールをはじめ古典から現代劇まで数多くの作品で主要な役を演じる。2015年に劇団四季を退団し、活動の場を浅利演出事務所に移す。『ミュージカル李香蘭』では初演から800回以上李香蘭役を演じている。現在は、俳優業とともに、浅利慶太演出作品の演出、演技の基本や方法論など、若手の指導や育成にも力を注ぐ。浅利演出事務所代表。
★公演概要★
『ミュージカル李香蘭』
日時:2022年4月23日(土)~5月8日(日)
場所:自由劇場(〒105-0022 東京都港区海岸1-10-53)
チケット:全席8,800円(税込)
主催:浅利演出事務所/協力:劇団四季
執筆者:大本 千乃 (おおもと・ゆきの)
2001年生まれの現役大学生。舞台スタッフ(主に舞台監督)の技術を勉強中。名前の読み方が難しいため、漢字そのまま、せんちゃんと呼ばれている。趣味はミュージカル鑑賞・オペラ鑑賞。最近は2.5次元舞台やストリートプレイにも興味がある。座右の銘は勇往邁進。
Commenti