イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』。その舞台化最新作、「MANKAI STAGE『A3!』ACT2! ~WINTER 2023~」が1月21日(土)にTACHIKAWA STAGE GARDENにて開幕した。東京公演は1月29日(日)まで、その後2月3日(金)~12日(日)にAiiA 2.5 Theater Kobeにて兵庫公演、2月17日(金)~26日(日)には再びTACHIKAWA STAGE GARDENに戻り、東京凱旋公演も行われる予定だ。春組からつないできたバトンが冬組まで渡ってきた今、彼らはどのように成長し、どんな芝居を見せてくれるのか。1月21日(土)に行われたゲネプロの様子をレポートする。
©Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. ©MANKAI STAGE『A3!』製作委員会
左から北園 涼、鯨井康介、輝馬、荒牧慶彦、田中涼星。
原作であるゲーム『A3!』は、プレイヤーがつぶれかけの劇団「MANKAIカンパニー」の主宰兼「総監督」となり、劇団の立て直しと成長を見守る物語。MANKAIカンパニーには春組、夏組、秋組、冬組と4つの組がある。劇団員はそれぞれの組に5人ずつおり、ACT2!では新たに各組ひとりずつ、新劇団員を迎えることにした。
今回のMANKAI STAGE『A3!』(通称「エーステ」)でフォーカスされるのは冬組。春組、夏組、秋組が6人の新体制で公演を終えたところだ。冬組も新メンバー「ガイ」を迎え、第四回公演『怪人Fと嘆きのオペラ』を上演する。
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左から荒牧慶彦、輝馬。
公演の大きな見どころは、劇中劇として披露される『怪人Fと嘆きのオペラ』だろう。かの有名なミュージカル『オペラ座の怪人』を新解釈で上演するこの作品。パリ・オペラ座を彷彿とさせる厳かなハーモニーにミュージカル『オペラ座の怪人』の象徴とも言うべき半音階の旋律を織り交ぜながら進行していく。その中で時折、劇団員たちは役としてではなく仲間同士で心を通わせ合う。役と役者自身とを行き来し、いくらか冬組の会話を劇中劇にも取り入れることで、どんな心情で板の上に立っているかがわかり、彼らと役が重なっていく。まさに観客=監督の視点から観ることができるポイントだ。これこそエーステ、役者が役者を演じる醍醐味ではないか。
エーステといえば、劇団員が客席に向かって話しかけてくれるのも特徴だ。まるで舞台上の人物たちの会話に加わっているような気分が味わえ、観客自らが彼らの「監督」であることを実感させてくれる。
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左から北園 涼、荒牧慶彦、輝馬、植田圭輔、上田堪大、田中涼星。
MANKAIカンパニーに突然現れた男、ガイを演じるのは輝馬。2.5次元舞台を中心にさまざまな役を演じてきた彼は、冷静で品のあるガイにふさわしく、安定した芝居と美しい所作を見せる。
ガイを舞台で表現するにあたって、注目すべきは歌だ。ガイは自分をアンドロイドだと思い込んでいて、感情がわからない。はじめは冬組が包み込む歌声の中でもひとり台詞のまま話しているが、自分の過去と感情を取り戻していくごとに歌声が激しく色づいていく。その様子は原作を知っている筆者からしても鮮やかで、ガイの感情はこんなにも豊かだったのかと気づかされる。
冬組の月岡 紬(荒牧慶彦)、高遠 丞(北園 涼)、御影 密(植田圭輔)、有栖川 誉(田中涼星)、雪白 東(上田堪大)を演じるのは今までのエーステを支えてきたおなじみの俳優たち。今までの公演を経て、すっかり芝居に魅了され、家族のように気心知れた彼らを演じてくれる。紬は声色や表情をあやつる繊細な芝居が持ち味。劇中劇『怪人Fと嘆きのオペラ』で彼が演じるクリスもその個性を活かした繊細な歌声で、執着のような歌への愛情を熱演する。荒牧は今回の公演をもってエーステ、そして月岡 紬役を卒業する。大切な仲間と一緒にいられることが永遠ではないと理解している紬、その台詞は荒牧に重なるかのように、ひとつひとつ重い響きをもってこちらに届いてくる。丞は芝居のことばかり考えているようだが、不器用ながらも優しさは伝わってくる。言葉や行動から感じられる仲間への愛情は絶妙だ。密が自らの経験をガイに重ねる真剣な目には心奪われる。常に眠そうな彼の劇中劇での豹変もお楽しみに。詩人でもある誉は奇天烈なポエムを次々と繰り広げ、その言い回しと手ぶりも相まって、会場にも笑いが広がった。東は過去の体験から悲しみを背負ってきたキャラクターだ。そのぶん、彼の冬組の仲間に寄り添う温かな表情はこちらの心まで和ませる。
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そのほかの登場人物も以前の公演と変わらず、安定感のあるメンバーだ。
物語のひとつのキーとなるシトロンは古谷大和が演じる。留学生の彼はいつも笑顔で、日本語を間違えてツッコミを入れられるなど、春組のムードメーカー。母国と劇団に揺れ動き、悩みながらも笑顔を保ち続けようとする彼の姿には心を動かされる。春組からはほかにも佐久間咲也(横田龍儀)、皆木 綴(前川優希)、卯木千景(染谷俊之)が登場し、シトロンと冬組を力強く支える。劇団支配人の松川伊助(田口 涼)と劇団OBの鹿島雄三(鯨井康介)も安定した芝居で彼らを見守っていく。
MANKAIカンパニーと敵対するGOD座の主宰である神木坂レニを河合龍之介、飛鳥晴翔を伊崎龍次郎が演じる。豪華なGOD座の演出にも劣らない、彼らの「ファビュラス」なパフォーマンスにも注目だ。
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左から古谷大和、新谷聖司、小椋涼介。
シトロンの祖国であるザフラ王国のキャラクターたちは今回が初登場。ザフラ王国の第4王子でシトロンの弟タンジェリンを新谷聖司、ガイの部下ミカを小椋涼介が演じる。タンジェリンは人懐っこく愛らしい印象を受け、王子としての権威ある姿勢は凛々しい。ミカの佇まいからは冷静さと賢さが感じられ、ガイとの掛け合いでうまれる緊張感は作品のアクセントになっていた。
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何年も続いてきたエーステだからこそ、上演ごとにパワーアップしてきた演出は今回も見応えがあった。劇団の寮であるMANKAI寮、そのキッチンや談話室の家具はゲームからそのまま出てきたように忠実。仕掛け絵本のような楽しい舞台転換はぜひその目で確かめてほしい。衣裳もどの角度から見ても美しく、それぞれのキャラクターを引き立てる。さらに、冬組がひとりずつガイと距離を縮めていく場面などでは、映像や照明にキャラクターカラーが用いられ、クリエイティブチームの作品への愛が感じられる。
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ゲームが原作である「MANKAI STAGE『A3!』ACT2! ~WINTER 2023~」、2.5次元舞台に馴染みのない方にとっては観劇するのに少々勇気が必要かもしれない。しかし、この作品を観劇するにあたって心配は無用。劇団員と心を通わせ成長を見守るストーリーは、きっとどんな舞台ファンにも感動と共感をもたらすはず。つぼみが花開くように板の上で輝く彼らを一緒に見届けよう。
公演情報
MANKAI STAGE『A3!』ACT2! ~WINTER 2023~
期間・劇場
【東京】2023年1月21日(土)~29日(日) TACHIKAWA STAGE GARDEN
【兵庫】2023年2月3日(金)~12日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe
【東京凱旋】2023年2月17日(金)~26日(日) TACHIKAWA STAGE GARDEN
原作:イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』
演出:松崎史也
脚本:亀田真二郎
音楽:Yu(vague)
振付:梅棒(伊藤今人 楢木和也 遠山晶司)
アクション:加藤 学
キャスト
【冬組】
月岡 紬:荒牧慶彦
高遠 丞:北園 涼
御影 密:植田圭輔
有栖川 誉:田中涼星
雪白 東:上田堪大
ガイ:輝馬
【春組】
佐久間咲也:横田龍儀
皆木 綴:前川優希
シトロン:古谷大和
卯木千景:染谷俊之
タンジェリン:新谷聖司
ミカ:小椋涼介
鹿島雄三:鯨井康介
松川伊助:田口 涼
飛鳥晴翔:伊崎龍次郎
神木坂レニ:河合龍之介
アンサンブル:今井俊斗 黒条奏斗 坂田大夢 髙久健太 茶谷優太 山本耕大
協力:一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
主催:MANKAI STAGE『A3!』製作委員会(ネルケプランニング、ポニーキャニオン、リベル・エンタテインメント)
チケット料金
【東京公演・東京凱旋公演】
S席:9,800円(全席指定/税込)
A席:8,800円(全席指定/税込)
見切席:7,800円(全席指定/税込)
【兵庫公演】
9,800円(全席指定/税込)
執筆者:大本 千乃 (おおもと・ゆきの) 2001年生まれの現役大学生。舞台スタッフ(主に舞台監督)の技術を勉強中。名前の読み方が難しいため、漢字そのまま、せんちゃんと呼ばれている。趣味はミュージカル鑑賞・オペラ鑑賞。最近は2.5次元舞台やストリートプレイにも興味がある。座右の銘は勇往邁進。
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