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執筆者の写真大本千乃 (おおもと ゆきの)

佐藤彩香 インタビュー「ジャンルに縛られず挑戦したい」



昨年12月にミュージカル『GREY』でヒロインshiro(しろ)を演じ、いま注目を浴びている佐藤彩香さん。大学や文学座に所属しながら活動を広げているパワフルでフレッシュな彼女に、2月25日から出演予定の舞台『アーモンド』と昨年の『GREY』について取材しました。『アーモンド』の稽古で日々忙しい中でのリモート取材となりましたが、終始笑顔で明るく応じてくださいました! (取材日:2022年2月6日)



ドラは愛しくて可愛い、特別な女の子

 

●本日はお忙しい中ありがとうございます! まさにお稽古中(※取材時)の舞台『アーモンド』についてお伺いします。佐藤さんはドラ役をオーディションで掴み取ったんですね、おめでとうございます!ドラのどんな所に魅力を感じましたか?


ありがとうございます! 私、最初に小説を読んだ時に、ドラちゃんが大好きになっちゃって。彼女は人間のいちばん純粋な部分が詰まった女の子で、子どもが大人に脱皮する直前の、いちばんキラキラしている時期だと思います。前に進むスピードや、パワーがあるんです。だから読んでいてすごく愛しいし、可愛い。『GREY』のshiroちゃんとの共通点もいろいろあります。『GREY』と『アーモンド』のこのふたりは、今の自分にとってとても大きい存在です。



●原作の小説はユンジェの目線で語られていて、ユンジェの世界の中でドラはとてもキラキラしていますよね。


そうなんですよね! ドラは、嫌なことは嫌って言えるし、先入観を持たずに人とまっすぐに向き合える。これはなかなか簡単にできることじゃないと思います。だからこそ、ユンジェにとっても特別に見えるんじゃないかな。



●お稽古をしていく中で、原作を読んだ時と印象が変わったシーンはありますか?


そうですね……。シーンというか、文字を読んで自分の頭の中で想像していたイメージが、(桑原)まこさんの音楽と(山田)うんさんの動きで作られると、こんなに自由自在になるのか! と思いました。本を読むときは自分のスピードですが、舞台の上ではその世界のスピードで進んでいくので、舞台ならではの面白さがあります。



●主人公ユンジェとゴニを演じる長江崚行さんと眞嶋秀斗さんは、回替わりでダブル主演ですね。キャストが変わることで、ユンジェやゴニへのアプローチは変わりますか?


絶対変わると思います! いまはお稽古で長江さんがユンジェをやっていて、眞嶋さんがゴニ。眞嶋さんのユンジェ・長江さんのゴニはまだ見ていないので(※取材時)、すごく楽しみです。おふたりが考えているユンジェ像・ゴニ像は違うと思うし、演じる人が変わればお芝居も変わるので、それを受けて自分はどう変わっていけるかが課題。おふたりのお芝居を繊細に受け取れるようにしたいです。




愛に気づくという感覚は、きっと、誰にでもある

 

『アーモンド』の「共感とは何か?」というテーマにちなんで、佐藤さんが共感する登場人物はいますか?


それぞれが人間らしくて、登場人物みんなに共感できる部分があるなと。中でも、主人公のユンジェがいろんな人の影響を受けて感情を知っていく過程に感情移入します。愛に気づく感覚は私の人生にもたくさんあるし、皆さんにもきっとあるはず。全員に共感できるし、惹きつけられる作品だと思います。





shiroは、誰に向けてこの曲を書いたのか。

 

●『アーモンド』のオーディションは、実は『GREY』より前に行われたそうですね。『GREY』を経て、お稽古やお芝居への向き合い方は変化しましたか?


はい。『GREY』で板垣さんの演出を受けて、役者としてどのように役を作っていくか、作品の中でどう貢献していくかというのを一から学んだので、それを『アーモンド』の稽古に取り入れています。『GREY』で得た気づきをすぐ『アーモンド』で試し、さらに板垣さんからのフィードバックをいただけるので、2作ともご覧になるお客様がいらっしゃったら、少しでも成長を感じていただけるといいな(笑)



●そんな『GREY』ですが、周りの方からの反響はどうでしたか?


それが、自分でも信じられないくらい反響があったんです! 私が以前から知っているお客様や、私が尊敬している方など、いろんな方から観たよ! と報告をいただきまして…。ただただびっくりですし、嬉しかったです。さまざまな感想をいただいて、改めて大きなターニングポイントだったなと感じました。



●shiroやほかの登場人物から影響を受けたシーンはありますか?


うーん、たくさんありますね。特に、元夫婦の紫さんと黒岩さんが、幼くして亡くなった娘のことを思い出してしまうから離婚を決断したというところは考えさせられました。お互いのことを大切に思っているけど、一緒にいるのがベストじゃないってわかっているから、離れるという……この渋さ(笑)。私ならできないなと思ったし、前に進むためにはそういう選択も必要なんだと勉強になるシーンでした。



●佐藤さんが演じたshiroの歌はまっすぐ明るく、心情がそのまま表れたように感じました。shiroとして歌う時に特別な意識はされていましたか?


shiroがライブで歌っている設定のシーンは、どのように表現するかすごく悩みました。中でもいちばん心がけていたのは、歌っている時に対象を作るということ。彼女はこの曲を書いた時に誰を思い浮かべて書いたのか、誰に伝えたくて書いたのかと考えました。というのも、きっと、いつもその人に対して歌っているから。明るい歌だから明るくという単純な表現ではなく、確実に自分の中でイメージできるようにしました。



●私も観劇いたしまして、佐藤さんご自身のあふれ出るようなエネルギーがshiroちゃんにぴったりでとても素敵でした! これからも注目していきたいです!


嬉しい〜! ありがとうございます!




ジャンルに縛られず挑戦したい

 

●ところで、佐藤さんは現役大学生ということで! そのあたりも伺いたいです。兵庫県出身とのことですが、上京してきたきっかけは何だったのですか?


大学入学がきっかけでした。大学の国際日本文化論プログラムというところに入りたくて。半分ほどが日本人、もう半分が留学生で、授業は全て英語。文学や舞台をはじめとした日本の文化を学んでいます。



●そこから、学外の公演に出演されるようになったきっかけは何だったのでしょうか?


もともとは学内の演劇サークルに入る予定だったのですが、留学とサークルの大事な期間が被ってしまって、入れなかったんです。そんなときに歌の先生に文学座を紹介していただいて、外部で演劇を学ぶ方法もあるよ、と教えていただいて。そこからは外部で演劇をすることが多くなりましたね。



●これから出演したいジャンルはありますか?


ジャンルに縛られず、お芝居をもっともっとやりたいです。ずっと前から好きなミュージカルにも出演したいし、小劇場演劇も続けたい。ひとつひとつ出演を重ねていった先に、得意なジャンルが決まっていくのかな。いまは、自分にとってビビっとくるような、素敵でご縁がある公演にたくさん出演していきたいです!



●最後に、舞台『アーモンド』への意気込みと皆様へのメッセージをお願いします!


大きなテーマである「共感」と「愛」。感情を感じられないユンジェがいろんな人の愛に気づいていく様子が、音楽・振付・舞台装置、全てを使ってみずみずしく描かれています。観てくださる皆様が、今までもらった愛や自分が投げかけた言葉を考え直してみよう、ゼロに戻して新たな気づきを探してみようと思うきっかけになればいいなと思います。ぜひ劇場へお越しください!



●ありがとうございます。舞台『アーモンド』そして佐藤さんのこれからのご活躍、楽しみにしております!



《Profile》

佐藤彩香 SATO AYAKA

2000年1月13日生まれ、兵庫県出身。文学座附属演劇研究所研修科2年。早稲田大学在学中。ストレートプレイ・ミュージカル・吹替など幅広く活躍。主な出演作に、舞台:『自殺の解剖』(国際演劇協会日本センター)、『17AGAIN』(ホリプロ)、『GREY』shiro役 (conSept)、吹替:『星の王子ニューヨークへ行く S2』ボポト役(Amazon Prime Video)『あの夏のルカ』(Disney+)『フィアー・ストリートpart2:1978』アリス役(Netflix)、ミュージカル『四月は君の嘘』コンセプトアルバムに参加。



 


お金の要らない特別チケット!? ミラチケとは

 

ミュージカル『GREY』や舞台『アーモンド』でも導入された“ミラチケ”というシステムをご存知ですか? ミラチケすなわち“未来のチケット”。若い層がより多くの舞台芸術に触れる機会をつくり、舞台芸術そのものの“未来”を開こうという試みです。①22歳以下であること、②同日来場できること、③終演後にアンケートに回答することを条件に、無料で観劇をすることができます。今回は、本公演の主催 conSept LLC 代表でもあり、一般社団法人未来の会議 代表理事としてミラチケを運営する宋元燮さんにお話を伺いました。



●ミラチケは無料で観劇ができるチケットですが、なぜ割引ではなく無料なのでしょうか?


たとえば、世界中でヒットしている作品は、舞台芸術を体験する入り口としてとても良いと思います。しかし、クオリティは高いですが、価格も高いことが多い。敷居を高く感じることもあるのではないでしょうか。そんな時にミラチケを利用して、初めての方にこそ観劇を気軽に体験していただきたい。そして、舞台芸術は接しにくいものではなく、人生に影響を与えたり心を豊かにしたりするということを感じていただけたら良いなと思います。よりたくさんの方に舞台芸術を体験していただき、その経験が良いものになれば、舞台芸術にもっと触れてみたいと思う方が増える。それが舞台業界全体を支える力にもつながると考えています。だから、まずは興味を持っていただくことが大事。ミラチケはそんな未来を目指した、ひとつの過程です。



●この活動を始めてから、ミラチケを利用して観劇された方からはどんなご意見がありますか?


ほとんどの方が好意的に受け取ってくださっています。今まで観劇してこなかったジャンルの舞台を観ることができて良かったというご意見をよくいただきます。中には、初めての観劇をミラチケで体験してくださる方もいらっしゃいます。



●では、提携公演を行った団体からはどのような意見がありますか?


導入してくださった方は、私たちと同じように、若年層の観劇者が少なくなっているという現状を感じていらっしゃいます。そして、ミラチケを活用することに意義があると考えてくださっています。ミラチケを利用する方々は、初めての観劇であるという方は少なくて。もちろん、そのような方に観劇してもらうのも大事ですが、一度も観劇を体験してこなかった方にも舞台を楽しんでもらいたい。そのためには、どのようにしたら情報を届けることができ、観劇していただけるのかが今後の課題です。



●ミラチケをこれからどのように運用していきたいですか?


現在は22歳以下の方のみが対象ですが、今後は年齢の制限をもうけない制度も作っていくつもりです。経済、環境などさまざまな理由で今まで観劇ができていない方に、舞台芸術が届くよう願っています。


●ありがとうございます!



《Profile》

宋元燮 SONG WONSUP

conSept合同会社代表。映像コンテンツと舞台公演の企画プロデュースを主業務としている。映像コンテンツにおいては4K、AR、VRなどのハイエンド技術を活用したテレビ番組やプラネタリウム向けコンテンツ、アプリ、サイネージなどを手掛ける。舞台公演はミュージカルを主とし、年2〜3本のプロデュース公演を実施。これまでのプロデュース作に『グーテンバーグ・ザ・ミュージカル』『深夜食堂』『In This House〜最後の夜、最初の朝〜』『HUNDRED DAYS』『Fly By Night〜君がいた』『サイドウェイ』などが有り、2019年4月にシアタートラムで上演されたオリジナル作品『いつか〜one fine day』は大きな話題を呼び、2021年6月の再演でも好評を博した。現在は新作舞台『アーモンド』が上演中。Simple、Small but Specialをテーマに小規模でも特別なものをお届けする事を目指している。

 

公演概要

舞台『アーモンド』


上演スケジュール:2022年2月25日(金)〜3月13日(日)

※2月25日(金)~3月7日(月)まで中止


会場:シアタートラム


キャスト

長江崚行:ユンジェ/ゴニ

眞嶋秀斗:ゴニ/ユンジェ

智順:ユンジェの母さん

伊藤裕一:ユンジェのばあちゃん

佐藤彩香:ドラ

神農直隆:ユン教授

今井朋彦:シム博士


スタッフ

脚本・演出:板垣恭一

原作:ソン・ウォンピョン (チャンビ刊)

翻訳:⽮島暁⼦(祥伝社刊)

プロデューサー:宋元燮

企画・製作・主催:conSept


ALMOND

(C)2017 by Sohn Won-Pyung All rights reserved.

Originally published in Korea by Changbi Publishers Inc.

Japanese translation copyright(C)2019 by Akiko Yajima

Japanese translation version is published by Shodensha Publishing Co., Ltd.

 

編集後記:『GREY』と『アーモンド』にご出演される佐藤彩香さん、そして「ミラチケ」を運営されている宋元燮さん。いま私個人としてもとても注目しているおふたりに取材させていただきました…! 佐藤さんは終始笑顔で丁寧に言葉を選びつつお話してくださり、かつshiroちゃんに感じたような可愛さもあり、とても魅力的な方です。これからも注目していきたいです。宋さんのお話からは、日本の舞台芸術を真剣に考えてくださっているのがとても伝わってきました。ご自身も舞台芸術の魅力を存分にご存じだからこその素敵な「ミラチケ」というシステムを、より多くの方々に知っていただきたいと思いました。

舞台『アーモンド』、全力でお勧めします!


執筆者:大本 千乃 (おおもと・ゆきの) 2001年生まれの現役大学生。舞台スタッフ(主に舞台監督)の技術を勉強中。名前の読み方が難しいため、漢字そのまま、せんちゃんと呼ばれている。趣味はミュージカル鑑賞・オペラ鑑賞。最近は2.5次元舞台やストリートプレイにも興味がある。座右の銘は勇往邁進。


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