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  • 執筆者の写真井上麻子 /Asako Inoue

100人のうち1人だけに響く曲があってもいい。ピアノ弾き語りシンガーソングライター・佐野仁美が活動10年目で決めたこと。



ピアノ弾き語りのスタイルで、さまざまな楽曲を世に送り出してきた佐野仁美さん。活動10年目を迎える2021年、活動拠点を関西から東京へと移転。ニューシングル「ジャンキーに染まろう」では、これまでと180°違う音楽性を解放し、新たな佐野仁美の始まりを感じさせる作品に仕上がっています。変革の時を迎えている彼女の現在を掘り下げました。



コロナをきっかけに、東京で挑戦することを決めた。

 

●今年の春に東京へ活動拠点を移されたとのことですが、関西を離れる決意をしたきっかけはなんだったんですか?


ずっと上京したかったんです。16歳から25歳までずっと関西で音楽活動をしてきて、今年でちょうど10年目。それなりに音楽の仕事で安定していたので、それを全部捨てて行くのはどうかと悩みました。けれど新型コロナウイルスの蔓延で、関西でやっていた仕事が全てなくなったんです。一歩踏み出すいいタイミングだと思いました。またコロナ禍をきっかけにオンラインで有料のライブ配信をしたり、どこにいてもリモートで音楽の仕事をできるような体制が整ったことも大きかったですね。



●ライブをメインにされていた印象だったので、関西のファンの方々はさみしい想いをされているのではないですか?


一番感謝しているのはファンの皆様。オンラインになっても応援してくれると言ってくださったことが、背中を押してくれました。ライブはとても大切にしてきましたが、私の一番の目標は「自分から生まれた作品を世に残すこと」。新しい挑戦ができる環境になって、ワクワクのほうが大きいです。目に見える形でみなさんに返していけたらと思っています。



●素敵です。ちなみに人生初の一人暮らしはいかがですか?


一人暮らしがこんなに自分に合っているとは!という感じです(笑)。意外と料理が好きだったみたいで、三食自炊を楽しんでます。親のありがたみも痛感していますが、自分でいろんなことに責任を持つことは大変ですね。人間としてすごく自立した気がします。



●音楽的にも新しい可能性が開けそうですか?


環境が変わって、本当にいろんなご縁が広がっていっているのを感じます。自分の目標を口にして、目の前のことをしっかりやっていれば見ていてくれる方はいるんだなぁと実感しています。




人を励ます音楽を作りたい。シンガーになったきっかけはあのグループ

 

●配信自体はコロナ禍のずっと以前からやってらっしゃったんですよね。


自宅からの無料配信は18歳の頃からずっとやっていました。ちょうどツイキャスが登場した頃で、当時は生配信で歌う人が少なかったのでそこを狙って。高校生で時間もたくさんあったので、毎週火曜日にやってました。有料のオンラインライブはコロナを機に始めたんですが、下地があったのでスムーズに実践できたと思います。ライブができなくても音楽で繋がれる、大事なツールです。



●アーティスト活動は16歳からということですが、どうして音楽をやろうと思ったんですか?


母いわく、私は音楽の胎教を受けていたらしいです。母親がお琴と三味線、姉もピアノや合唱をやっていて、家の中にはいつも音楽がありました。自分も4歳からピアノ、5歳から合唱団と自然と音楽を始めて。お琴と三味線と尺八のアンサンブルが響き渡る家って、なかなかないですよね(笑)。レアな環境で育ててくれたことに感謝しています。自分の音楽のルーツは幅広いんですが、伝統音楽もどっかで生きていたらいいなと思います。



●そこからシンガーになる!と決めたのはいつ頃ですか?


中学校の英語の先生がバックストリート・ボーイズが大好きで、彼らの曲を聞いて歌詞を穴埋めするという授業があったんです。その時に聴いた「I Want It That Way」に衝撃を受けて。家に帰ってさっそくYouTubeで調べて聴いてたら、もう感動して涙が止まらない状態に。それで気づいたんです。「自分にはたくさん悩みがあって、音楽がそれを癒やして支えてくれてるんだ」って。だから私も人を励ますことができる音楽を作ろうと思いました。



●バックストリート・ボーイズでしたか!


バックスに憧れたので、最初は歌って踊れるシンガーになろうとダンスをやったりもしていました。母のアドバイスで弾き語りにシフトチェンジしたんですが。



●佐野さんは鍵盤を見ないで弾き語りすることを大事にされているんですよね。


いつも目をつぶって弾く練習してます(笑)。鍵盤を見ると目もふせてしまうしマイクから口が外れるし、いいことがないんです。100%歌とお客さんに集中したいから、鍵盤は見ないで弾きます。



●弾き語りの良さってどういうところだと感じてますか?


その場その場の音になること。音楽って良くも悪くも人となりとか、精神状態が出ちゃうんですよね。弾き語りならテンポを変えたり、途中で思いついたらMCを入れたり、いくらでも形を変えることができる。水みたいに、いろんなかたちに変われる音楽そのものの醍醐味を味わえるのが弾き語りだと思います。




100人のうち1人だけに響く曲があってもいい。新しい佐野仁美が動き出したニューシングル

 

●ニューシングル「ジャンキーに染まろう」はこれまでと全く違う佐野さんの世界観が弾けていますが、何か起こったんでしょうか?(笑)


ファンの方々も同じことをおっしゃってます(笑)。活動10年の節目で、アーティスト佐野仁美の在り方について考えたんです。「私の持ち味ってなんだろう?」って。たどり着いたのが、“音楽的なバラエティの豊かさ”。私、どんなトーンの曲でも書けるんですよ。前奏を聴いただけで誰の曲がわかるようなアーティストにも憧れるけど、私は一つのアルバムでいろんな世界観の曲が入っているような、そんなアーティストも好きで。私ももっといろんな側面を出していってもいいんじゃないかと気づいたんです。「ジャンキーに染まろう」は、自分が変わるために思いっきりハンドルをきった作品です。



●それまでは音楽的バラエティを出してこなかった感覚があったんですか?


ずっと殻を破れていなかったですね。これまでは、目の前に100人がいたら100人全員に伝わるような曲を作っていた感覚。そういう曲も大事なんですが、「ジャンキーに染まろう」をリリースして、100人のうち1人にだけ刺さる音楽があってもいいんじゃないかと思えました。



●タイトルにはどんな想いを込めたんですか?


正しいことだけを言っていても、人は動かせないなと思って。ジャンクフードって身体に良くないけれど、なんだかんだ誰もがそれで満たされた日があると思うんです。良くないけれど、音楽なら時にはそういうものを肯定できるのかなって。実際にあの曲で「エネルギーをもらいました!」という言葉をたくさんいただいて。



●新しい「アーティスト佐野仁美」の幕開けですね。


思いっきりハンドルをきったので賛否両論ありますが(笑)。今回は変化球を投げただけで、佐野仁美の根本は変わらず、”聴いてくれた人が毎日をちょっと頑張ろうと思えるような音楽を作りたい”ということ。これからも自分の中に生まれてくるいろいろな考えや感情を、なるべく伝わりやすいサウンドや世界観で発表し続けていきたいです。



●新しい門出、応援しています!最後にこれからエンターテインメント業界を目指す世代になにかメッセージいただけますか?


自分に素直になることが一番大事だと思います。素直に走る。自分の作品にも、出会う人や出来事に対してもそうですが、自分が感じた違和感は信じたほうがいいと思います。それはたぶん間違ってない。あと「いまこれをやりたい!」と思うような想いも、感じた時に実行したほうがいいと思います。したい時にする力ってすごいから。シンプルにみえて難しいことかもしれないけれど、私は実際東京にきて後悔していないし、やらなかった後悔のほうが大きくなると思うから。素直に、思いっきり走ってください。




《Profile》


佐野仁美(さの・ひとみ)


兵庫県出身。大阪音楽大学短期大学部ポピュラーコース卒業。ピアノ弾き語りシンガーソングライター。


ライブハウスや商業施設、イベント会場の他、YouTube やツイキャスといったネット配信でも精力的に活動している。YouTube ではチャンネル登録者数 31,200人 を突破し、毎日 1 万回以上の動画再生回数となっている。ツイキャスでは総視聴者数 174 万人、通知登録者数は 44,500 人を突破。2021年6月より活動拠点を関西から関東へ移した。2021年9月に上京後、初のリリース作品であるシングル「ジャンキーに染まろう」をデジタルリリース。




デジタルシングル「ジャンキーに染まろう」


収録曲:「ジャンキーに染まろう」


公式ミュージックビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=3QejC2ZAbWs

配信・サブスクリプション詳細: https://linkco.re/VRg7zzbB




 

執筆者 : 井上麻子 /Asako Inoue


食べること、つくることに関する取材が多め。舞台芸術、スポーツ観戦、音楽イベント、卵など、“生”で楽しめるものはたいてい好き。SAKE DIPLOMAの資格を持ち、「日本酒のおねえさん」としてときどきポップアップSAKEバーも開催している。



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