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  • 執筆者の写真清家愛 Mana Seike

コラボレーターとの出会いの場!若き表現者たちが立ち上げたプラットフォーム "Art-in-Progress"とは




 新型コロナウイルスの流行により舞台芸術のあり方が見直される今、多くの演劇人たちがこの状況下でも自身の表現活動を継続させる手段を模索し続けています。表現活動を行うことで人と出会い、世界を知り、社会とつながってきた私もその例外ではありません。昨年の春にアーティスト仲間と今できる作品づくりの可能性を探っていたとき、改めて表現活動を行うために最適な場とはどのような場なのかを問い直しました。

 そこで、自分たちの周りにいる「今」何かを作りたい!と本気で思っている表現者たちをつなげようと、私たちは2020年4月に新しいプラットフォームArt-in-Progressを立ち上げました!


 

Art-in-Progress:本気で「今」何かを作りたいと思っている表現者のプラットフォーム


<活動指針> 

Art-in-Progressは、本気で「今」何かを作りたいと思っている表現者のプラットフォームとして以下のような場として存在することを目指す。

1.創作意欲と素直に向き合う場 :演劇人・映像制作者・音楽家をはじめとする、「今、何かを作りたい、表現したい」という気持ちをもつクリエイター、パフォーマー、プロデューサー、キュレーターなどのためのソウゾウ(上)の空間。

2.失敗を恐れず実験できる場:誰もが実験的な企画を提案し、常識や前例にとらわれない作品創造に挑戦できる環境。

3.コラボレーターとの出会いの場:企画への賛同者を募ったり、自分の創作に対してフィードバックを求めたり、他の表現者との繋がりを作れる場所。


<活動場所>

 

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 今回、演出家、翻訳家、通訳として活動する私、清家愛/せいけ まな (画像下)と立ち上げに携わったメンバーの山本史織/やまもと しおり (画像左上) 、櫻井春寿/さくらい はるつね (画像右上) がArt-in-Progress(以下AiP)にかける思いと、これまでやこれからのプロジェクトについてご紹介します!





◆ アートって何?一言でいうと?


さて、まずは自己紹介もかねて、3人が現時点で思う「アート」=〇〇を紹介します!


清家 アート=自分から普段は隠されている世界への「窓」

山本 アート=コミュニケーションのツール

櫻井 アート=時間を認識するもの

「アート」への意味付けも、それを通して達成したいことも異なる3人ですが、共通項としてあるのは、何かを表現したい!作品を作りたい!という気持ち。そして、そのためのクリエーションの場を必要としているということです。


AiPは、そんな私たちがそれぞれクリエーションの現場にどんなことを求めるかをもとに誕生しました。



◆ それぞれが創作において求める「こういう場」


山本「人とオープンに出会える場」


櫻井「作品を作りたいという共通の目的を持つ人々と活発に対話や意見交換を行える場」

「同じ道を目指す人たちがスキルやノウハウを伝承できる場」


清家「最終成果物だけではなく、アイデアや進行中のプロジェクトに対して様々な観点からの意見を得られる場」


創作現場に求めることを話し合ったところ、それぞれ「仲間がいない」「意見がもらえない」などの悩みを抱えていることが明らかになりました。そこで、AiPはプラットフォームとして「創作意欲と素直に向き合う場」「失敗を恐れずに実験できる場」「コラボレーターとの出会いの場」の3つの場を目指すことを理念とすることにしました。



◆ 理想のクリエーションへの出発点


AiPは劇団でも団体でもなく、「プラットフォーム」です。プラットフォーム(Platform)という言葉には「出発点」や「足掛かり」という意味があります。ヒエラルキーや役割分担がない環境で、ひとりひとりが自立した存在として主体的に場づくりを行う場所、そのような意味合いを込めこの形成を選びました。


立ち上げの際に私たちがターゲットとしたのは、「本気で」「今」表現をしたいと思っている表現者でした!このキャッチフレーズには社会的立場、年齢や専門分野の違いを越えて、AiPの目指す3つの「場」を求めている人々にとって、クリエーションの出発点となるような場にしたいという願いが込められています。


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Photo by Tsutomu Nishikawa


◆ Art-in-Progressのあるアーティスト人生


発起人でありながら、プラットフォームという形態の性質上AiPのいちユーザーに過ぎない私たち。昨年4月の立ち上げから、AiPを出発点として多様な企画や作品作りを行ってきました。これまでプラットフォームから生まれた企画として、


  • 「Stay Home Stay Creative」:Stay home期間に開催された短時間でオンラインでをアイデアを形にしてアウトプットするワークショップ

  • 「虚構の構図」:アニメーションを演劇的観点から議論するzoomディスカッション

  • 「すがたをかえる演劇」:演劇における脚本家、演出家、役者、観客の視点の交わり合いを考察する実験企画

  • 「雄弁な沈黙は狭間で囁く」:下田の空き倉庫with a treeで場所と人の対話を生み複数アーティストが作品を同時に製作・再生するアートプロジェクト


などがあります!


これらの企画を通して、多くの学びと出会いました!


櫻井「2020年は様々な企画に挑戦しようとしたけど、実際に形になったものはわずかだったんだよね。そこには『失敗』を恐れる気持ちがあったんだと思う。だからこそ、AiPが自分の芸術活動の中にあることで、完成形までたどり着かなくても創作の全過程が財産になるんだって思える。」


清家「私も、AiPが目指す3つの『場』を前提とすることで、未知の領域に踏み出せた。そういう意味でAiPの存在は私の表現活動における態度にすごく影響を与えていると思う。AiPで実験的な企画をしたことで、こうして作品を作ってその効能を検証することで自分のアーティスト人生は前進していくんだって実感したんだよね。」


「すがたをかえる演劇」や「雄弁な沈黙は狭間で囁く」は、企画メンバーが創作活動のなかで普段から疑問に思うことを検証できる仕組みを考えることから始まり、大規模な作品作りでは難しい様々な実験を行うことができました。ひとつの企画での検証結果をもとに、また実験してみたいことが増えていきます。さぁ、次はどのような「アートの実験」が行われるのでしょうか…?



◆ Art-in-Progressのこれから


表現したい者同士がコラボレーターとしてお互い切磋琢磨できる環境があれば、それぞれの創作の障害となるものが減り、作品の質が上がる!そうしたら、芸術活動をあきらめる人口が減るかもしれない。将来的にはAiPの利用者が増えることによって、そのようなサイクルを生み出せれば素敵だと思います。


今は様々な専門分野の観点から芸術の発展や創作に貢献したいと考える人たちがAiPのメンバーとなってくれることを心から望んでいます。AiPが表現したい人々と、アートと社会や経済をつなげたい人々の出会いの場所にもなれば、プラットフォームが起点となって始まることの可能性がさらに広がるのではないでしょうか?


今後プラットフォームの掲げる理念に賛同した表現者が多様なコミュニティから集まり、未来のコラボレーターとなることを願っています!



◆ Project-in-Progress: 現在進行中の企画


現在AiPを起点とした企画として、櫻井春寿主宰・演出のプロダクション「SNOOPY the Musical」が進行中です!以下、主宰のコメントです。


お馴染みのキャラクターが織りなす日常は、あなたの目にどう映るでしょうか?

毎日があの漫画の世界のように、変わらず平和だったらなぁ...なんて考えたことはありますか?

そんな変わり映えしないように見える彼らの日常も、私たちが触れることで変化するかも。

スヌーピーの世界を覗いてみると、スヌーピーもこちらを覗いている??

さあ、私たちと一緒にスヌーピーの世界を覗いてみましょう!!

そこには、あなたの「たいせつ」が描かれているかも。

ぜひ劇場で、皆様のお越しをお待ちしております!


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「SNOOPY the Musical」

 2021年3月3日(水)〜7日(日)

 中目黒トライにて上演


 Instagram @snoopy_musical_






《 Profile 》

清家愛(せいけ まな

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上智大学国際教養学部国際教養学科比較文化コース4年。演出家、パフォーマンスメーカー、俳優として演劇をはじめとするアート作品製作に取り組み、幼少期に演劇を通して言語習得を行ったバックグラウンドを生かして芸術分野での通訳・翻訳家として活動する。芸術や言語を通して人生の中に存在する物語を異なる形態に翻訳し、新しい切り口を見出すことを目指す。主な活動歴は「HEADLINE」 (下北沢ハーフムーンホール・2019)の企画及び演出、アートプロジェクト「雄弁な沈黙は狭間で囁く」(with a tree, 静岡・2020)の企画とパフォーマンス創作、「 In the Heights」 (赤羽文化会館・2020)、「SNOOPY the Musical」(中目黒トライ・2021) の上演台本翻訳など。2020年8月から10月にかけて東京芸術祭APAFの国際コラボレーションの創作現場でアートトランスレーターアシスタントとして日英、英日通訳、字幕作成を行う。



山本史織(やまもと しおり)

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2019年ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校舞台芸術学部卒業。オーストラリアを拠点に活動する舞台美術家Tanja Beerに影響を受け、持続可能な舞台美術、コミュニティーアートを主軸に活動。個と社会の関係性をアートを媒体として考察する作品を演劇と現代美術の境界線を行き来しながら作る。主な作品に、下田の空き倉庫で場所と人の対話を生むアートプロジェクト「雄弁な沈黙は狭間で囁く」(with a tree, 静岡・2020年)、Found objects (新規購入以外の方法で手に入れた物)を使って描く女性による非暴力反核運動をテーマにした演劇作品「Common Ground」(Orval House, London・2019年)の舞台美術、廃坑のメタファーを劇場空間に作り出すインスタレーション「Cena#3: Intersections」(Bute Theatre, Cardiff・2018年)など。また、2019年より舞台美術家松生紘子に師事、2020年より助手を務める。ミュージカル、2.5次元、オペラなど幅広い領域の作品に携わる。




櫻井春寿(さくらい はるつね)

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玉川大学芸術学部メディアデザイン学科卒業。俳優、演出家、サウンドデザイナー、プロデューサー。United Performers Studio所属。大学時代は公共空間における音情報の活用と問題について研究。現在は、主にメソッド演技法を用いた表現方法での俳優活動を行う一方で、環境作りとアート作品との相互作用をテーマに活動。主な活動歴は、「Believe」(玉川大学・2017)の企画・

演出・出演、「ストリートザミュージカル2019」にてプリンシパル出演、「銀河の中の賢治」(アップススタジオ・2019)プリンシパル出演、「Quarantine theatre」(オンライン上演・2020)企画・演出、「SNOOPY the Musical」(中目黒トライ・2021)の企画・演出など。


 

執筆者 : 清家愛 (せいけ まな)


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