• 松村 蘭(らんねえ)

井上智恵×沼尾みゆきインタビュー エンターテインメントと食のタッグで届ける“生きる歓び”



劇団四季在団中に『キャッツ』『アイーダ』『マンマ・ミーア』等、幅広い作品でメインキャストを務めてきた井上智恵さんと、『ウィキッド』のグリンダ役オリジナルキャストとしての活躍が印象的な沼尾みゆきさん。お二人はクリスティーヌ(『オペラ座の怪人』)、ベル(『美女と野獣』)、マリア(『サウンド・オブ・ミュージック』)など、同役を担うことも少なくありませんでした。


そんな井上さんと沼尾さんが、2022年3月に東京・Grand Maison ORENOにて開催される『MUSICAL SHOWBOX Ⅲ』に出演されます。お二人の出会いから劇団四季時代を振り返りつつ、コンサート本番に向けたそれぞれの想いを語っていただきました。




今振り返る、劇団四季時代の懐かしい思い出

 

●井上さんと沼尾さん、お二人が初めて出会ったのは劇団四季在団中ですか?


沼尾:四季の前に、智恵さんは東京藝術大学の先輩なんです。私の在学中に劇団四季が公演をしに来たことがあって、そこに智恵さんや石丸(幹二)さんがいらっしゃいました。智恵さんは『オペラ座の怪人』の「スィンク・オブ・ミー」を歌われていて、それを聴いて「うわ〜〜〜!」と拍手していたのが出会いです(笑)。


井上:そうだったんだ〜(笑)。



●在団中のお二人は同役をされていた印象が強いのですが、共演はありましたか?


沼尾:大体役が被っているんですよね。あ、でもファミリーミュージカルの『人間になりたがった猫』で私がアンサンブルをやっているとき、ジリアン役の智恵さんが箒を振り回しているのを舞台上で見ていたことがあります(笑)。


井上:懐かしい! 日生劇場で上演していたときですね。



●そんなこともあったんですね。同じ役を演じる際、稽古場でご一緒するようなこともあったのでしょうか?


井上:2010年に『サウンド・オブ・ミュージック』のマリアを演じていた頃に、そういうこともありました。劇場でリハーサルをするときに沼尾ちゃんがいたのを覚えています。


沼尾:マリア役は、智恵さんと(笠松)はるちゃんで公演がある程度走り始めてから出演させていただいたんです。なので、最初の頃はお二人の稽古をずっと見学していました。



●当時の印象的なエピソードがあれば教えてください。


沼尾:よくボス(浅利慶太)が「おい智恵、こいつに教えてやってくれ」と言うんですね(笑)。それで私が智恵さんに「お忙しいのにすみません・・・・・・」と、個室で歌い方を教えていただくということがありました。


井上:え〜そうだったっけ?


沼尾:はい、すごく励ましていただきました! そんなときもあったんです(笑)。



●在団中、お互いのことをどんな役者だと感じていましたか?


井上:やはり同じ大学出身なので、他の人より親近感があるんですよね。一緒に舞台に立つことは少なかったのですが、『ウィキッド』で沼尾ちゃんのグリンダをよく観させてもらっていました。「コミカルな演技もできるかわいらしい人だなあ」と思っていましたね。


沼尾:恐れ入ります(笑)。私にとって智恵さんは最初から雲の上の存在で、もはや神みたいな位置にいらっしゃる方。そういうすごい方が仕事をしている姿を間近で見て、「ああなれたらいいなあ」という憧れと、「でもちょっと無理かなあ」という気持ちとが入り混じっていました。





『MUSICAL SHOWBOX Ⅲ』出演に向けて〜コンサートならではの魅力〜

 

●そんなお二人が『MUSICAL SHOWBOX Ⅲ』に出演されます。沼尾さんが1st WEEK(3月4日〜6日) 、井上さんが2nd WEEK(3月25日〜27日)ですね。


井上:実は今回の出演が決まってから、前回の『MUSICAL SHOWBOX Ⅱ』を観させていただきました。こんな素敵なステージに私も出演できるんだと思い、すごく楽しみにしています。新型コロナの影響でなかなかコンサートができない状況が続いており、私としては久しぶりのコンサートなのでとても気合が入っています。


沼尾:このシリーズが始まったときに「いいメンバーだなあ。いつか出たいなあ」と思っていたんですよ。それに伴奏の倉沢大樹くんは高校の同級生で、同じクラスだったんです。


井上:え〜同級生!?


沼尾:はい、私の斜め後ろに座っていました。いいやつなのでよろしくお願いします(笑)。



●倉沢さんのエレクトーンは素晴らしいですよね。『MUSICAL SHOWBOX』シリーズの大きな見どころの一つだと思います。


井上:本当にすごいですよねえ。たった一人でバーンと世界を作り上げてしまう様に圧倒されました。


沼尾:天才なんですよ。高校生のときから人間離れしていて、“現代版モーツァルト”だなと思っていました。学生時代にエレクトーンの世界大会で優勝もしているんですよ。


井上:前回公演を観たとき、歌い手さんに合わせて一緒に音楽を作っている様子がよくわかりました。倉沢さんの伴奏はきっととても歌いやすいんだろうなと思います。


沼尾:はい、こちらの呼吸を読んで合わせてくれます。「ミュージカルが好きだ」と昔からずっと話していたので、こういうコンサートに携わることができて本人も嬉しいだろうなと思います。



●ミュージカル作品とは異なる、コンサートならではの魅力はどういうところに感じますか?


井上:一つの作品だと約2時間半〜3時間でストーリーや役のキャラクターを伝えますが、コンサートは1曲2〜3分くらいで、しかもメインナンバーがいっぱい。その短い時間の中で、作品世界を最初から最後まで全部観たと思っていただけるよう、お客様にお伝えできたらいいなと思います。


沼尾:ミュージカル作品の場合はセットや衣装があって、ストーリーの繋がりがあって、その途中にナンバーがあるんですよね。一方、コンサートではセットも衣装もなく単品で提供していきます。そのような中でもお客様に情景が見える歌をお届けできるよう、努力し続けたいといつも思っています。



●そんな凝縮されたナンバーをコンサートで歌うとき、切り替えはどうやってされていますか?


井上:一度舞台に立っている作品だと、単発で歌ったとしてもそのときの情景が自然と浮かんでくるんですよ。ナンバーの最初の音を聞いただけで、その世界にダーンと一気に引き込まれるというか。


沼尾:曲の前奏がかかるだけで、カチッとハマる感じがするんです。先日、柳瀬大輔さんとも話したのですが「ロングラン公演をやって細胞レベルに染み付いている役だったら、3日リハーサルもらえればできるよね」って(笑)。



●流石です(笑)。四季時代の懐かしい曲の他に、お二人とも初挑戦の曲があるそうですね。


井上:あります。作品には出演したことがあるけれども、このナンバーは歌ったことがないなあという曲が。


沼尾:すごいヒント!



●新しい曲に挑戦するときはどのように取り組んでいくのでしょうか?


井上:私は本当に体育会系なので(笑)、とにかく歌い込みますね。聴くよりも、声を出して何回も歌って体に染み込ませるような感じです。朝から練習して気が付けば日が暮れているようなことも(笑)。


沼尾:私も昔はそうだったんですけど、小人が増えてしまったのでなかなか・・・・・・(笑)。まず曲の状況や歌詞のイメージをとにかく膨らませて、保育園の送り迎えの車中で大熱唱して練習に励んでいます。どれだけ短時間で体に染み込ませられるかということに、毎日命懸けです(笑)。



●コロナ禍で厳しい状況が続きますが、そんな中でエンターテインメントを届けるにあたっての想いを聞かせてください。


井上:コロナが長期化することで、みなさん心身ともにいろいろな弊害が出てきています。こんな状況だからこそ、エンターテインメントを通してコロナによる弊害を払拭していきたいなと思いますね。


沼尾:在団中に浅利先生が「舞台は明日への生きる活力だから」とよくお話しされていて、今それを身をもって感じています。何をするにも制限がある生活をしていると、段々疲れてくるじゃないですか。そんなときに舞台を観たり歌を聴いたりすると、ものすごく元気がでて「明日も頑張ろう」と思えるんです。改めて、芸術はやめちゃいけないことなんだなと感じます。非力ながら、私も歌える機会があればこれからも歌っていきたいですね。


井上:浅利先生は「私たちは『生きる歓び』をお伝えするために舞台に立つんだ」ということもよくおっしゃっていました。今の世の中、本当にそのとおりだなと思います。在団中は先生にビシビシ鍛えられましたが、大事なことを学ばせていただいたなと。今となっては感謝しかないですね。浅利先生だったらこの状況でどうしていたのかな、とよく考えちゃいます。


沼尾:うんうん、私も思います。


井上:2011年の東日本大震災のとき、あざみ野にいた浅利先生はお客様のことを考えてすぐに食料や毛布の手配をされたそうなんです。その後も『ユタと不思議な仲間たち』を東北の学校の体育館で上演し、現地の小中学生を招待していました。そういうことやる人だったから、コロナ禍でもきっと何か行動されたのだろうなと思います。



●最後に、『MUSICAL SHOWBOX Ⅲ』を楽しみにされているお客様に向けてメッセージをお願いします。


井上:私たちは、エンターテインメントを通してお客様に「生きる歓び」をお伝えします。そして会場で食事を作ってくださる方は、食を通して「生きる喜び」を伝えてくださると思うんです。ですのでエンターテインメントと食でタッグを組んで、お客様に心も体も幸福感を味わっていただきたいなと思います。


沼尾:智恵さんがおっしゃる通りですね。素晴らしいお料理が提供されるので、私たちはいい音楽を提供できるように全力で頑張りたいと思います! どうぞ楽しみにしていらしてください。



《Profile》

井上智恵(いのうえ・ちえ)

熊本県出身。東京藝術大学声楽科卒業後、劇団四季に入団。

『CATS』で初舞台を踏み、以後21年間、高い歌唱力と演技力を武器に数々の主演を演じる。『サウンド・オブ・ミュージック』では初演マリア役を務め、『エビータ』『アイーダ』ではタイトルロールを演じる。その他にも『オペラ座の怪人』クリスティーヌ役、『美女と野獣』ベル役、『マンマ・ミーア!』ドナ役など多数出演。2016年より(株)ワイズ・スポーツ&エンターテイメントに籍を移し、舞台やコンサート活動の他にボイストレーナーや大学講師など後進の育成、またエンターテイメント・プロデューサーとしてデイサービスの新しい音楽プログラムの開発を行っている。




沼尾みゆき(ぬまお・みゆき)

栃木県宇都宮市出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。

二期会オペラスタジオを経て1998年「四季劇場開場記念オーディション」に合格し、劇団四季に入団。『オペラ座の怪人』クリスティーヌ役、『ミュージカル李香蘭』タイトルロール、『サウンド・オブ・ミュージック』マリア役、『美女と野獣』ベル役、『ウィキッド』グリンダ役など数々の作品にヒロインとして出演。2011年末劇団四季を退団。 退団後の主な出演作品にミュージカル『ひめゆり』上原婦長役、日生劇場ファミリーフェスティヴァル2016ミュージカル『三銃士』アンヌ王妃役、ミュージカル『タイムトラベラー』ヒロイン・リンジー役など。コンサート・ライブや、テレビ東京系『THEカラオケ★バトル』などテレビ番組他出演多数。




♦︎公演概要

『MUSICAL SHOWBOX III』


公演スケジュール :

【1st WEEK】 2022年3月4日(金)~6日(日)

【2nd WEEK】 2022年3月25日(金)~27日(日)


会場 : Grand Maison ORENO

東京都千代田区大手町1-7-2

東京サンケイビル地下2階

https://www.oreno.co.jp/restaurants/grandmaison


出演者 : (男女別/敬称略)

1st WEEK(3⽉4⽇~6⽇)

彩乃 かなみ、熊本 亜記、沼尾 みゆき、北翔 海莉、星乃、金 すんら、中井智彦、福井 晶一

※出演者の変更:岡田亮輔さんは諸事情により休演となります。


2nd WEEK(3月25日~27日)

出雲 綾、井上 智恵、井上 希美、悠未 ひろ、吉沢 梨絵、岡田 亮輔、金 すんら、坂元 健児


クリエイティブチーム:

演出/小見山 佳典

音楽監督/塩田 明弘

伴奏・⾳楽アレンジ/倉沢 ⼤樹

ステージング/金子 礼ニ郎

スタイリスト/Die-co★


料金 : 1階席:22,000円/2階席:20,000円/3階席:18,000円(全席指定・税込)

◎原価割れの飲み放題付き特製コース料理

◎俺のベーカリー特製「MUSICAL SHOWBOX」刻印入り食パンお土産付き


主催 : 俺の株式会社

協力 : 株式会社アミューズ


公式Twitter:https://twitter.com/MusicalShowbox


 

執筆者:松村 蘭(らんねえ)


演劇ライター。1989年生まれ。埼玉県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。出産を機にIT企業を退職し、ライターへ転向。仕事のお供はMacBook AirとCanon EOS 7D。いいお芝居とおいしいビールとワインがあるところに出没します。 Twitter:@ranneechan