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  • 執筆者の写真松村 蘭(らんねえ)

【イベントレポート】『伊礼彼方の部屋 vol.7 〜樹里咲穂×三浦宏規×伊礼彼方〜 あの街角で偶然に出会った人たちの集い』



2021年7月23日(金)夜、大好評イベント『伊礼彼方の部屋』が二度目となる配信形式で開催されました。この日のゲストは、伊礼さん(ジャベール役)が『レ・ミゼラブル』で共演中の樹里咲穂さん(マダム・テナルディエ役)と三浦宏規さん(マリウス役)のお二人。 ここでは、3人による“あの街角で偶然に出会った人たち”座談会の一部始終をお届けします。



オープニングトーク いつのまにか『樹里咲穂の部屋』に!?

 

「どうもみなさま〜! ようこそ伊礼彼方の部屋Vol.7へ!」伊礼さんの元気な掛け声と爽やかスマイルでオープニングトークが始まります。ゲストのお二人について「接点がないという話をお聞きしたんですけれども」と伊礼さん。樹里さんは「本当はあるんだけどね〜」。それに対して三浦さんも「ありますよ」とニヤリ。そんな二人の知られざる共通点にも触れつつ、出演中の『レ・ミゼラブル』の話題を中心になんと2時間超え(!)のボリュームトークが展開されました。


序盤からいきなり「樹里咲穂の部屋」というワードが飛び出るほど、樹里さんのトークが炸裂! 三浦さんが『レ・ミゼラブル』全国公演中に『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』に出演すると聞いた樹里さんは「どんなどんな? “リトルな声”聴きたい!」と三浦さんに詰め寄ります。三浦さんがマリウスとは全く違う気弱な青年役の甲高い声で歌うと、さらに「その変な声でマリウスやったら?」と樹里さん。このオファーに対し、三浦さんは“リトルな声”で「巡り会えたのに〜♪」とマリウスの曲の一節を披露するという想定外の展開に。この一連のやり取りを見て「第一印象を聞こうと思ってたのに、それ追い越して先行っちゃったよもう!」と、樹里さん節に圧倒される伊礼さんでした。




『レ・ミゼラブル』ならでは! 照明による動きの制約

 

『レ・ミゼラブル』は照明に特徴があり、上からではなく横からキャストに光が当てられることが多いそうです。それ故に、他の作品ではあまりないような動きの制約があるのだとか。樹里さんの場合は2幕の結婚式シーンの最後、左腕を掲げる際に“腕を後ろ側にして掲げる”という指定があり、「こうしないと顔に照明当たらへんから、後ろにしろって言われてる」と、その場でマダム・テナルディエのポーズを実演。


三浦さんの場合は背が高いことが弊害になってしまうことがあるそうで、「『A Heart Full of Love』でコゼットと向き合って歌うときに、僕が横に立つとコゼットの顔に照明が当たらず真っ暗になるんですよ」と説明。そのため、コゼットと向き合うときは体の向きをできるだけ正面に反らし、照明の当たり方を調整する努力をされているのだとか。


お二人と同じく伊礼さんもジャベールの「自殺」シーンで制約があるそうで「橋の上に立って歌うときは両サイドから照明が当たっているから、ちょっとでも動くと照明から外れてしまうんです。だからこの光の中でしか芝居ができないんですよ」と動き付きで解説してくれました。あれだけ激しい芝居をしながらも、照明からは外れない伊礼さんの腕っぷしを褒め称え、樹里さんが「な・の・に、あんな熱い芝居しちゃってるわけね」とコメント。それに乗っかる形で三浦さんも「よっ!」と拍手で盛り上げます。




舞台上での知られざる苦労〜フランスパンの切り方と担がれ方〜

 

事前に募集していた質問から面白い質問が届いており、「フランスパンは切る派ですか? 切らない派ですか?」という樹里さんへの質問が取り上げられました。これには苦笑しながら「私、“切りたい派”なのよ」と答える樹里さん。1幕の宿屋でマダム・テナルディエがパンを切るシーンでは、実は切れない包丁と本物のパン(東京會舘で売っているおいしいフランスパンだそうです!)が使われており、切りたくてもなかなか切れないのだとか。トリプルキャストでマダム・テナルディエを務める森公美子さんと谷口ゆうなさんは同じ条件で見事にパンを切っているため、樹里さんはそんなお二人を羨ましく思っているのだとか。「本当は私も切りたいねん!」と悔しさを滲ませる、樹里さんのかわいらしい一面が垣間見える瞬間でした。


続いては「バルジャンに担がれるときに工夫していることはありますか?」という三浦さんへの質問が読み上げられます。他のマリウスより身長も高く体重が重いという三浦さんは「めっちゃくちゃあります! あそこがマリウス一番疲れます。それを言ったらバルジャンの人が一番大変だと思いますけど」と回答。三浦さんによると、マリウスは気絶しているという設定ではあるものの、できるだけバルジャン役に負担を掛けないように体を引き上げ、腕に力を入れてしがみついているそうです。こうしてお話を伺っていると、客席から舞台を観ているだけではわからない、舞台上の知られざる苦労はたくさんありそうですね・・・・・・!


バルジャンの話が出たところで、バルジャン役の一人・吉原光夫さんがいかに怪力か、という話題へと発展。リアルバルジャン説が出るほど、三人から飛び出す光夫バルジャンの怪力エピソードは尽きることがありません。“光夫被害者の会”というパワーワードまで登場しましたが、「でも優しい! いい人! 熱い人!」と話す三人からは、同時に“光夫愛”も感じられました。




接点のない二人の意外な共通点

 

冒頭で「樹里さんと三浦さんは接点がない」という話が出ていましたが、ここで実際のところどうなのかお二人に聞いてみることに。すると樹里さんが「二人とも英国ロイヤルバレエ団のファンだったの!」という意外な共通点を明かしてくれました。英国ロイヤルバレエ団は、三浦さんがバレエを始めるきっかけにもなった憧れのバレエ団。樹里さんは最近詳しくなってきたそうで、「バレエなんだけど演劇なの。そこが好き!」と熱く語ります。伊礼さんは以前、『エリザベート』のルドルフ役の勉強を兼ねてバレエを観に行ったことがあり、「びっくりした! セリフがないのに感情が伝わってきて、めちゃめちゃ感動しましたよ!」と初めて観たバレエの感想を振り返ります。「私はそれ観て泣いてますから」と樹里さん。「そこまでいける?」と疑う伊礼さんに、三浦さんも「全然泣ける!!」とバレエファンで結託し、短いながらも熱いバレエトークが繰り広げられました。




キャストによって変わる役への意識

 

トークが盛り上がってくると、樹里さんはテナルディエ夫妻が営む宿屋でのとあるアドリブシーンで起きたハプニングを暴露。なんと樹里さん、橋本じゅんさん演じるテナルディエに対して「俺んとこ来いよぉ!」というなんとも男らしい言葉が口をついて出てしまったのだとか。元宝塚の男役の樹里さんならではのエピソードに、伊礼さんも三浦さんも大爆笑。当の橋本さんは、舞台上であっけに取られてちょっぴり引いていたとか(笑)。それ以来、「つい男が出ちゃうんですよ〜」といった“男役ネタ”がしばしばアドリブに登場するようになったそうです。


ダブルキャスト、トリプルキャスト等、一つの役を複数のキャストが入れ替わりで演じることが多い『レ・ミゼラブル』。相手役の人が変わることによって、自然と役に対する意識まで変わることも少なくないようです。例えば、1幕でバルジャンが馬車に轢かれた民衆を助けるシーン。伊礼さんは「ジャベールとしてバルジャンを見るときに、福井(晶一)さんとシュガー(佐藤隆紀)さんに対しては、“こいつはバルジャンじゃないのか?”と疑いの目を向けてしまうけれど、光夫さんのバルジャンは疑う気持ちが出てこないで最後まで信じ切ってしまう」と不思議そうに語っていました。


三浦さんも「(キャストが変われば)絶対にアプローチは変わってると思います」とし、「すっごい殴ってくる子もいれば、おちょくってくる子もいれば、すっごい自分に自信がない子もいたり。人によって全然違って面白いですよ」と三人のエポニーヌに対してコメント。それを聞いた伊礼さんは「へえ〜。どれが誰か聞きたいわ〜(笑)」とニヤニヤ。複数のキャストがいる場合、それぞれのキャストと長時間稽古をするということがどうしても難しくなります。この複数キャストの仕組みについて「いざ本番で共演するときに恐怖と面白さがある」と実感を込めて語る三浦さんでした。


配信が行われたこの日は、実は東京オリンピック開会式の当日。18時から始まったトークが終わる頃には、開会式が始まる20時を過ぎていました。前回のvol.6をさらに超え、2時間オーバーの大ボリュームでお届けした『伊礼彼方の部屋 vol.7』。第8回はあるのか? ないのか? 次回の開催を匂わせつつ、第7回はお開きとなりました。




 

執筆者:松村 蘭(らんねえ)


演劇ライター。1989年生まれ。埼玉県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。出産を機にIT企業を退職し、ライターへ転向。仕事のお供はMacBook AirとCanon EOS 7D。いいお芝居とおいしいビールとワインがあるところに出没します。 Twitter:@ranneechan

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